図の説明をしましょう。図Aの背景のもとで図aの色を表示したいとします。しかし図aをそのまま図Aの上におくと、人間には図Bのように、ややピンクっぽく見えてしまいます。
筆者と新井しのぶによる数理モデルから得られた結果は、図bを図Aの上に置けば、図Aの背景のもとで近似的に図aの色になるというものです。その結果を示すのが図Cです。ただし、これは筆者らの視知覚にカスタマイズした数理モデルによる計算です。
なお、ここではシミュレーションで得られた色を比較していただくために、便宜上、図a、図bを二つ並べましたが、これらを見るときには新たな同時対比が起こっていることに注意が必要です。
今回は色の同時対比について解説しましたが、この他にも色に関する錯視にはいろいろなタイプがあります。ここでは触れることができませんでしたが、色の錯視、あるいは色知覚そのものも古くから研究され、現在も多くの人々によって研究が進められています。
この記事で解説した新しい数理モデルによる色の同時対比の研究成果については、特許(発明者:新井仁之、新井しのぶ 特許権者:国立研究開発法人 科学技術振興機構)を取得しています。
著者:新井仁之(あらい ひとし)
東京大学大学院数理科学研究科・教授、理学博士。
横浜市生まれ。早稲田大学、東北大学を経て現職。
視覚と錯視の数学的新理論の研究により、平成20年度科学技術分野の文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)を受賞、また1997年に複素解析と調和解析の研究で日本数学会賞春季賞を受賞。
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