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「細菌で文字を描く作品」に「画像圧縮アルゴリズムを物語にした作品」も メディア芸術祭に行ってきた

» 2017年09月19日 13時04分 公開
[太田智美ITmedia]

 第20回目となる文化庁メディア芸術祭が9月16〜28日、東京都新宿区にあるNTTインターコミュニケーション・センター及び、東京オペラシティ アートギャラリーを中心に開催されている。入場は無料。


文化庁メディア芸術祭 細菌で文字を描く作品『The Living Language Project』

 展示されている作品は、4034作品の応募から選ばれたもの。アート、エンターテインメント、アニメーション、マンガのそれぞれの部門ごとに賞が決まる。今回の展示は例年と異なり、部門ごとではなく「似たようなキーワードを持つ展示」を隣接するブースに集めたのが特徴だと関係者は話す。

 今年の展示作品を見てみると、映画『シン・ゴジラ』や『君の名は。』、スマートフォンゲーム『Pokemon GO』などを始めとする、世間で注目を浴びたコンテンツを題材にしたものが目立ち、従来の「メディア芸術祭ならでは」の作品にあった驚きと新鮮さがあまりないように感じた。そんな中、気になった4作品を紹介したい。

細菌で文字を描く『The Living Language Project』

 The Living Language Projectは、細菌を使ったアート。約2000年前に消滅したといわれる古ヘブライ文字と現代のヘブライ文字を、細菌を使って描く。

 面白いのは、細菌のエサとなるタンパク質を用いて、細菌をエサに向かって増殖させ、あたかも古代の文字が現代の文字へと形を変えているように見えること。生き物の活動を制御した興味深い作品だ。


文化庁メディア芸術祭 古ヘブライ文字から現代のヘブライ文字へ

文化庁メディア芸術祭

石を地質年代順に分類する『Jller』

 Jller(イラー)は画像認識技術によって、小石を地質年代順に分類し、さらに種類と年代順に並べ替えていく装置。ドイツのJller川の底から採取された小石を、吸着式アームによって並べ替える。


画像圧縮アルゴリズムを物語として描いた『DCT: SYPHONING. The 1000000th interval.』

 DCT: SYPHONING. The 1000000th interval.は、JPEGなどの形式で使われる画像変換技術「DCT」(離散コサイン変換)を擬人化した、「シニア」と「ジュニア」の物語。慣れ親しんだ画像の世界から異なる形式の画像の世界に踏み出し、古い形式に無関心のジュニアの様子などを描く。


文化庁メディア芸術祭 画像圧縮アルゴリズムを物語として描いた『DCT: SYPHONING. The 1000000th interval.』

電気刺激を与えることで「塩味」を感じさせる『NO SALT RESTAURANT』

 NO SALT RESTAURANTは、電気刺激を与えることで「塩味」を感じさせるプロジェクト。高血圧症や脳卒中の患者など、塩味の効いた食事を取ることができない人のためのプロジェクトだ。塩味を感じるとされる舌のエリアを刺激することで、塩味が感じられるようになるという。

 味覚の電気刺激を用いた研究は以前から行われているが、このプロジェクトのユニークな点は「無塩料理のフルコース」にチャレンジしていることだ。


文化庁メディア芸術祭 電気刺激を与えることで「塩味」を感じさせる『NO SALT RESTAURANT』

 他にも、日本科学未来館で常設展示されているロボット『Alter』(オルタ)や日常の“あるある”をテーマにしたミュージックビデオ『岡崎体育「MUSIC VIDEO」』などが展示されている。

太田智美

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