長時間労働に悩む日本企業と対比しながら、米国、特にシリコンバレーのIT企業の効率的な働き方について紹介する本連載。前回は、日本企業の長時間労働の現状や、米国でコラボレーションの必要性が注目されている背景をお伝えしました。
今回は、そうしたコラボレーションの経済効果や、米国のIT企業がどのような仕組みで従業員間コラボレーションを促しているか――といった中身の部分をご紹介していきます。
近藤誠(こんどう・まこと)
スタンフォード大学工学部大学院 (技術経営)を卒業後、米Evernote社でパートナー製品マネージャーなどを歴任。その後、伊藤忠テクノソリューションズアメリカに製品担当ディレクターとして着任。
いまや、どの企業もコラボレーションを無視して旧態依然のワークスタイルで仕事を続けることは不可能である――このことは前回の記事でもご紹介した通りです。
米国ではシリコンバレーのIT企業をはじめ、さまざまなビジネス現場で「従業員感の連帯、つながり意識の醸成」が経営課題として認識されつつあります。米McKinsey & Companyの調べによると、従業員同士が連携し合うことで、組織の生産性は20〜25%向上し、その効果は年間1.3兆ドル(日本円にして140兆円超)に相当する可能性があるとのことです。
ジョブディスクリプション(職務記述書)に記される職務内容も、他部門・他チームとの協働ではじめて実現できるものになりつつあります。このように、コラボレーションをせざるを得ない事業環境、多様な個人の働き方を会社が受け入れる仕組みを持てるかどうかが必要な時代性、コラボレーションを網羅的に支えるクラウドツールの勃興が相まって、その価値がより高まってきたと考えられます。
米SMB Communicationによると、社内コミュニケーションの弊害による生産性の損失は従業員1人当たり年間約2万6000ドル(約300万円相当)と算出されています。 つまり、従業員が数十人いる場合は数千万円、大企業の場合は数億円規模の生産性損失が生まれていることになります。
さまざまなバックグラウンドを持つ従業員同士をいかにつなげるか――その取り組みは各社それぞれです。例えば、社内目標やチーム内目標を達成したメンバーや記念日を迎えたメンバーを祝ったり、オフィススペースの動線改善や会議室のリフォームといった物理的な社内改装を行ったり、チームビルディング目的のミーティングや社外活動の時間を設けたり……。
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