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「8Kしか撮れない業務用カメラ」シャープが開発 “約30年ぶり”市場参入の理由は

» 2017年11月16日 13時30分 公開
[山口恵祐ITmedia]

 「このカメラは8Kでしか撮影できません。4KやフルHDなら、他社の優秀なカメラを選ばれると思います」──シャープの製品担当者は、新しく披露した8K対応業務用カメラの特徴をそう話した。

 シャープは、4Kの4倍の解像度を持つ8K(7680×4320ピクセル)に対応した業務用ビデオカメラ「8C-B60A」を幕張メッセで開催中の国際放送機器展「Inter BEE 2017」(11月15日〜17日)で公開した。単体で8K映像の撮影から収録、再生、ライン出力が行える製品は世界初(同社)という。発売は12月、価格は880万円(税別)。

photo PLマウントレンズやビューファインダー、マイク、バッテリーなどを装着した状態

 同社が業務用ビデオカメラを発売するのは三十数年ぶり(社内でも正確に把握できていないという)。3300万画素のCMOSイメージセンサーで8K/60pの映像を約40分(2TB SSD)収録できる。

 これまでも8Kで収録できるカメラは市場に存在していたが、カメラ(撮影)、コントロールユニット、レコーダー(録画)でハードウェアが分かれており、単体で録画しながら出力できないといった制約があったという。「8Kに対応しながら、普通のビデオカメラと同様の使い勝手を実現した」(同社)

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なぜシャープが業務用カメラを発売するのか

 業務用ビデオカメラはソニー、キヤノン、パナソニックの3強が国内にそろっている。シャープが業務用ビデオカメラを発売する理由は、8Kの普及促進が狙いであると同社の戒能正純さん(電子デバイス事業本部 セミコンダクター事業部 企画部 部長補佐)は説明する。

photo シャープの戒能正純さん(電子デバイス事業本部 セミコンダクター事業部 企画部 部長補佐)

 「実は8C-B60Aは8Kでしか収録できません。フレームレートは選べますが、現状は割り切った仕様です。8Kエコシステムを構築するという目的に沿ったカメラであり、出荷台数を増やしてビジネスをするという視点とは少し違うものになります。今から4Kビデオカメラなどのラインアップを作るということはありません。4KやフルHDを撮るなら他社の優秀なカメラがあるので、そちらを使うだろうという認識を持っています」(戒能さん)

 シャープ鴻海グループで「8Kエコシステム」というスローガンを掲げ、8Kの入り口から出口までを自社で手掛けて8Kの普及を促進する狙いという。8C-B60Aは8K映像を入力する“入り口”を担う製品だ。

 しかし、同社は近年、業務用カメラを扱っていなかった。8C-B60Aの技術的要素や開発は、共同開発の映像機器メーカー・アストロデザインが手掛けたという。「シャープは品質や量産などでお手伝いしている状態です」

photo シャープとアストロデザインの共同でブースを展開
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 8C-B60Aは放送局用カメラ、シネマ用カメラなどと用途を限定するわけではなく、汎用的に使えるカメラを目指して開発された。高精細な映像を撮影して医療分野やセキュリティ、AI(人工知能)を使った画像解析などに使いたいというオファーも来ているという。

 シャープはNTTドコモと共同で、5G(第5世代移動通信方式)を使った8K映像伝送の実証実験も始めている。「スマートフォンに8Kはいらないという声もあるが、映像をピンチインして拡大するなど、8Kならではの新しい映像体験が作れるかもしれません。まずは映像がないと提案できないので、(8K業務用ビデオカメラの発売は)そういった入り口を作る狙いもあります」

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