三菱電機は1月17日、車載カメラの映像を運転席のモニターに映す「電子ミラー」向けに、クルマの後ろから近づく車両を認識して表示する技術を開発したと発表した。高速道路上で後方100メートル程度を走るクルマを早期に認識し、ドライバーに注意を促すことで、車線変更時などの事故防止につなげる狙い。
新技術は、人間の視覚のメカニズムを応用した。映像全体から周囲と比べて輪郭が目立つ部分を優先して注目し、クルマを検出。ディープラーニング(深層学習)を使って車種(トラック、乗用車、バイクなど)まで判別するという。検出範囲を絞ることで演算量を抑えた。三菱電機 情報技術総合研究所の三嶋英俊さんは「(視覚の特性を)うまく見習ってAIに取り込んだ」と話す。
同社によれば、従来技術では、後方車両が近づいてくる様子を車載カメラで捉え、認識していたが、遠く後ろを離れるクルマは“見かけの動き”が小さく、30メートル程度まで近づかないと検出できなかった。新技術では、100メートル後方のクルマでも、映像を撮影してから30ミリ秒ほどで検出できるという。
後方車両が30メートル後ろにいる場合、車線変更は難しいが、100メートル離れた時点で早期に認識できれば、追い付かれるまでに7秒ほどの猶予があるため、事故を防げるという考えだ(2台のクルマの相対速度差が時速50キロの場合)。
今後は、ミリ波レーダーやLiDAR(Light Detection and Ranging)などと組み合わせ、カメラでは見通しが悪い状況下でも検出精度を高める。将来は、後方車両が近づくと警告音を出すなどして、ドライバーの運転をサポートする考えだ。「後方車両を検知するシステムは他にもあるが、(カメラ映像を利用すると)車種も判別できる。後方からトラックが迫っている場合は車線変更をしないというドライバーもいるのではないか」(三嶋さん)
三嶋さんは、新技術は「自動運転分野でも必須の技術になる」とも話した。
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