「白物」と呼ばれる生活家電に大きな変化が起きようとしている。キーワードはIoT(モノのインターネット)。ネットワークにつながり、新しい価値を生み出すという「コネクテッド家電」に向け、各社の動きが加速している。2月に家電事業の新コンセプトを打ち出した日立アプライアンスもその1つ。同社の徳永俊昭社長、ならびにデジタルイノベーション推進本部長 CTOの笹尾桂史氏、家電環境機器事業部 商品戦略本部長の漆原篤彦氏に一歩踏み込んだ現在と未来の話を聞いた。
2月1日に開催した事業説明会の冒頭、同社は「360°ハピネス」という新しいスローガンを掲げた。これまで培ってきた家電の技術に加え、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)、そしてグループ会社やパートナー企業の持つ技術やノウハウまでを積極的に活用し、消費者の身近な問題を解決していくという意思表示だ。
日立ではまず、コネクテッド家電の魅力を「ワーキングマザー」と「シニア世代」という2つのターゲット層に対して強く打ち出す。理由は「いま家電にまつわる“困りごと”を最も多く抱えている層」だからだ。
「ワーキングマザーの方からは、日ごろの家事に追われる忙しい生活を便利な家電がサポートしてくれることへの期待が寄せられています。一方のシニア世代については、使い方がますます複雑になる家電がスマート化で使いやすくなること。また(将来は)遠隔サポートや故障の予兆診断などの機能も提供できると考えています」(徳永氏)
第1弾商品として、スマートフォンやスマートスピーカーから遠隔操作もできるロボット掃除機「minimaru」(RV-EX20)と、スマホアプリによって料理のレシピを参照したり、火加減を選択・調整できるIHクッキングヒーター「火加減マイスター」(HT-L350T)をお披露目した。どちらも時短と使い勝手という課題に挑戦したコネクテッド家電といえる。
「これまでの家電製品は、メーカーが最先端の技術や機能をユーザーに対して一方的に押しつけてきたように思います。今はこれほどモノが充足している環境の中で、これからの家電製品が本質的に求められている役割を突き詰めると、それは人々の生活に寄り添いながら困っていることをしっかりと解決できることであると考えました」
単なる話題性からコネクテッド家電を手がけるのではなく、ネットワークを課題を解決する具体的な“手段”として活用する。例えば生活家電もPCやスマートフォンと同様にインターネットへのコネクティビティを持つことでソフトウェア更新により新しい機能を追加できる。このことにも日立は目を付け、ユーザーの変わる生活スタイルに合わせて「進化する家電」という考え方を打ち出した。
「今はまだ技術が確立していないために使えない機能も、1年後には本体のソフトウェアをアップデートすることによって使えるようになる可能性があるとすれば、コネクテッド家電の大きなメリットを感じてもらえると思っています」
例えば最近の洗濯機は節水性能の高い製品が主流だ。しかし家電の寿命は10年以上と長い。夫婦の2人暮らしなら節水も重要だが、子どもが生まれ、大きくなってくれば今度は水を多く使っても“どろんこ汚れ”がきれいに落とせるほうが重要になるだろう。こうした生活の変化に合わせて家電の機能をアップデートし、各家庭の課題を解決するのが、進化する家電の大きな目的だ。
「他にもロボット掃除機の“minimaru”に新しいお掃除パターンを追加することなどが考えられるでしょう。日立はこれを実現できる柔軟なプラットフォームを用意して提供したいと考えています」(徳永氏)
では、日立はコネクテッド家電を今後のラインアップの中でどのように位置付けていくのだろうか。インターネットへの接続機能を搭載するとコストアップにつながるため、現在のところは日立のラインアップも上位のプレミアムモデルを中心にスマート化が進んでいる格好だ。今後スタンダードクラスの普及モデルにまで広がるのだろうか。
徳永氏は、ユーザーの「受容度」に多分に影響を受けるだろうと予測している。「生活必需品であるアプライアンス製品については、価格がこなれている製品の方が良いという意見があります。インターネット接続の機能を搭載したために販売価格が上がってしまい、元々インターネット系の機能は不要と感じるユーザーから敬遠されてしまうことも避けたいところ。コネクテッド機能の普及、展開については、市場を注意深く見ながらタイミングを図っていきます」
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