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VR好調、DMM.com 売れる作品の“鉄則”

» 2018年06月06日 08時00分 公開
[片渕陽平ITmedia]
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 「うおお、すごい」――水着姿の美しい女性がグイっと目の前に迫る。また別の作品では、見上げると巨大なウルトラマンが仁王立ちしている。そんな光景に記者は思わず声を上げてしまった。日本国内大手の動画プラットフォーム「DMM.com」は、こうしたVR(仮想現実)動画を約4200タイトルそろえている。2016年11月にVR動画の取り扱いを本格的に始め、初年度(16年11月〜17年11月)の売り上げは約20億円。以降も右肩上がりという。

 「サービス開始前は、そんなに売れないとの予測が強かった」――DMM.comの木村知憲さん(動画配信事業部 営業マネジャー)は苦笑いする。


photo DMM.comの木村知憲さん(動画配信事業部 営業マネジャー)

 開始時の取り扱いタイトル数は100本ほど。「DMM.comの社内にはベンチャーの魂というか、新しい技術に飛び付く姿勢がある。今後、確実にビジネスになると考えて始めた」(木村さん)というが、当時はVR作品自体が少なく、とにかく「かき集める」という状況だった。

 ただ、DMM.comにはアドバンテージがあった。「もともと動画配信のプラットフォームを手掛けていたので、新しい仕組みを一から作るわけではなかった。コンテンツの許諾を得て調達し、VRヘッドマウントディスプレイに対応するアプリを作ることができれば、他社よりは始めやすかった」(木村さん)

 「SNSでの反響もあり、コンテンツホルダーやメーカーからも多数の問い合わせがあった」(木村さん)

売れる作品の“鉄則”

photo DMM.comの太田春輝さん(第1営業本部 動画配信事業部)は「ホラーや旅行、男性アイドルとデートが楽しめるコンテンツなども人気」と話す

 販売するVR作品は、成人向けのコンテンツが多いが、特定のジャンルに限らず「あるものは全部扱う」という姿勢だ。最近ではホラー作品や、旅行を疑似体験できる作品など、ジャンルの幅が広がってきた。そうした中、DMM.comが掘り当てた鉱脈の1つが、キャラクターなどのIP(知的財産)を使ったコンテンツだった。

 火付け役となった作品は「刀剣乱舞」。刀剣を擬人化したキャラクターが登場するゲームを原作にしたVR作品は、女性ファンの心をつかんだ。「それまで当社の動画サービスは女性が少なかった。VRをよく知らなくても、IPに興味があるユーザーが新規で買ってくれた可能性が高い」(木村さん)。現在は刀剣乱舞以外にも、「進撃の巨人」や「ウルトラマン」などが人気を集めているという。

 IP作品かどうかに限らず、売れる作品には“鉄則”がある。商品パッケージを作り込むことだ。VR映像はヘッドマウントディスプレイを通じて視聴しないと湾曲して見えるため、そのまま映像をキャプチャーしてパッケージ画像にすると見栄えがよくない。VR映像が優れているのに、パッケージで損をしてしまう。

 「内容をイメージしやすいように、2D用の素材を用意して、パッケージをしっかり作った方がいいとメーカーには案内している」(木村さん)

「市場を盛り上げたい」

 「正直、いま同じようなサービス事業者で競合はいない」(木村さん)。ただ、市場がまだまだ小さいということもある。「コンテンツを提供するメーカー側がDMM.comだけでなく、他の売り場でも取り扱いが増えると(売り上げが伸びると)、作品数自体が増える。いまはどちらかというと、互いに市場を盛り上げたい」

 この先、価格が安くクオリティーが高いVR機器が普及すると「ようやく市場が膨らむ」(木村さん)。「そうした体制が整ったとき、当社が最大限の作品ラインアップをそろえ、価格を整え、他社と勝負ができるようにしておきたい」

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