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「ゲーム用語が分からなかった」 タニタのゲーム業界進出、責任者は“ゲーム初心者”だった(2/4 ページ)

» 2018年06月15日 07時00分 公開
[片渕陽平ITmedia]

 久保さんは「大変でした」と苦笑いする。それまで久保さんが扱っていたのは「コラボレーション案件」が中心だった。例えば、家庭用ゲーム機「セガサターン」のデザインを再現した体組成計のように、他の企業とコラボし、タニタの既存商品をベースにした新商品を開発、新しい顧客層を取り込むというものだ。

 しかし、ゲームコントローラーの前例はない。タニタにとって、全く作ったことがない製品へのチャレンジだった。「誰に何を聞けばいいのか、というところからスタートした」(久保さん)

「ゲーム用語が分からなかった」

 久保さんは、バーチャロンを遊んだことがなかった。谷田社長との会話では、ゲーム用語が分からず苦しんだという。「言葉に付いていけなかった。1つずつ調べながら進めた」。久保さんのPCには、調べたゲーム用語をまとめたメモが残っているという。

 秋葉原にも足を運んだ。実際にバーチャロンのアーケードゲームに触れ、ファンにも話を聞いた。そうするうちに面白味を感じ始めたという。「操縦かん型のツインスティックを握り、自分がロボットを動かしている感覚は、通常のコントローラーとは全然違う。ダイナミックな動きを感じられる」

 2月15日、退路は断たれた。とある魔術の電脳戦機の発売日、谷田社長がツインスティックの開発を表明するメッセージ動画がYouTubeに公開された

photo タニタの谷田千里社長=クラウドファンディングのプロジェクトページより

 それまでプロジェクトは、社内では特に周知していなかったという。「いきなり社長のメッセージが公開されたので、社内もざわついた」。ただ、そのメッセージ動画をきっかけに、ゲームが好きな社内の開発者もプロジェクトに集まるようになった。久保さん自ら、そうした社員がいる部署に出向き、プロジェクトに引き込んだ。社外の製造メーカーの協力も得た。

「1つのモノができていくのを感じた」

 開発するツインスティックVTXは「一生もの」がコンセプトだ。久保さんがバーチャロンのファンと交流し、同作のプロデューサー亙重郎さんと打ち合わせを重ねる中で、イメージができていった。こだわったのは「アーケードの操作感を再現すること」だった。

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