「全ての企業が、テクノロジー企業になる」──米Slack technologiesのスチュワート・バターフィールドCEOは、6月26日に都内で開いた報道陣向け発表会でそう話した。
ビジネスコラボレーションツール「Slack」は、2017年11月に日本語版を公開。日本では現時点で50万人以上の日間アクティブユーザーがおり、Slack全体では世界第2位の規模。その中の15万人以上が有料プランユーザーだ。都道府県別で見ると、東京都だけで30万人以上のユーザーがいるという。
世界では100カ国以上で800万人以上の日間アクティブユーザー、300万人以上の有料プランユーザーを抱え、50万以上の組織が利用しているという。
特に全世界でSlackを利用する組織のうち、過半数が非IT企業だという。スチュワートCEOは、非IT企業にSlackの利用を促す上で「テクノロジーは非常に大きなインパクトがある」ことを訴えている。
「Paypalは金融企業かテクノロジー企業か、Airbnbは民泊企業かテクノロジー企業か──こういった企業が今後も増えるだろう。テクノロジーは全ての業種に影響を与える。テクノロジーの進歩に付いていくために、企業はコミュニケーションをスムーズにする必要がある」(スチュワートCEO)
同発表会のパネルディスカッションに登壇したディー・エヌ・エーの成田敏博部長(経営企画本部IT戦略部)によると、プロ野球チームの横浜DeNAベイスターズもSlackを使っており、「ラミレス監督もアカウントを持っている」という。
日本でSlackを利用するユーザー数が全世界で第2位となった理由について、スチュワートCEOは「ボトムアップで利用者が増えている」と分析する。
「現場の人が『Slackを使いたい』と声を挙げてくれたのが要因ではないか。ビジネスワーカーは上司に信頼してほしいと思っている。実際に手を動かす人は上司に聞かなくてもやるべきことや優先順位を理解している。意思決定を効率化して効果を上げたがっている」(スチュワートCEO)
スチュワートCEOはその実例として、米OracleがSlackを導入したきっかけが、小さな企業の買収にあったと説明する。
「Oracleがとある小さな企業を買収するとき、その小企業が『今使っているSlackをそのまま使わせてくれ』と言った。しかし、OracleはSlackが会社公認のソフトウェアではないと断った。すると、その小さな企業は『買収を断る』とまで言った」(スチュワートCEO)
Slack Japanの佐々木聖治カントリーマネージャーは、企業の現場で使われるソフトウェアやツールが増え、非効率な伝言ゲームが生まれて想定外のトラブルが発生しているのではないかと指摘する。
「日本は働き方改革に注目が集まっているが、生産性は海外に比べて低い。一方で、デジタルネイティブ世代はコミュニケーションツールを活用することが当たり前になっている。そういった人材を受け入れられる企業が変革を起こす時期だ」(佐々木カントリーマネージャー)
佐々木カントリーマネージャーは、日本でSlackの利用者を維持するため、(1)Slack Japanのメンバーを2018年内に30人以上へ増員、(2)国内パートナー企業の支援を受け、Slackと100以上の国内サービスの連携機能を強化、(3)Slack導入の成功事例を共有できるコミュニティーを支援、といった施策を行うという。
「『Slackを使って良かった、具体的な成果が出ました』と言っていただけるよう支援する。『お疲れさまです、よろしくお願いします』といった作法のあるメールから解放されると、毎日がとっても軽い。楽しくて、全くストレスを感じない」(佐々木カントリーマネージャー)
スチュワートCEOはSlackの将来について、パーソナルアシスタント機能を強化する方針であることを明かした。具体的には、Slackでやりとりされた情報の中から意思決定に必要なものをユーザーに推薦したり、自動で優先順位を付けたりするという。
「例えば、会社の新入社員が過去の膨大な議論の記録や資料を簡単に参照できる。それらは、AI(人工知能)によって実現するようになる。全ユーザーがアシスタント機能を使えるような基礎技術を作っていきたい。コンピュータが得意とすることはそれに任せ、人間にしかできない作業をやるべきだ」(スチュワートCEO)
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