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浴衣のカノジョと“恋人つなぎ” VRとマネキンで平成最後の夏をかみしめたCEDEC 2018

» 2018年08月25日 08時00分 公開
[片渕陽平ITmedia]

 「女の子と手をつないで縁日にデートする」――そんな体験ができるVR(仮想現実)コンテンツ「縁 Yukari」が、ゲーム開発者イベント「CEDEC 2018」(8月22〜24日、パシフィコ横浜)に出展された。現実世界のマネキンの女の子の手を取ると、VR空間のキャラクターの動きにも反映される仕組みだ。東京工芸大学の学生が卒業制作として作り上げた。制作者の1人は「女の子から褒められたかった」と話す。

photo マネキンの女の子と“恋人つなぎ”
photo 記者にはこんな風に見えている

 記者がVRヘッドマウントディスプレイ「HTC VIVE」を装着すると、目の前には神社の境内のような空間が広がり、ヘッドフォンからは祭りばやしが聞こえてきた。ふと左横を見ると、可愛らしい女の子がほほ笑んでいる。VR空間内で女の子の手をつかむと、確かに人肌の感触がある。

 その仕組みはこうだ。記者がVR空間でニヤニヤしているとき、現実世界では隣にマネキンを設置。マネキンの手には、位置をトラッキングする装置が付いている。記者がVR映像を見ながらマネキンの手と“恋人つなぎ”をすると、映像にもリアルタイムで反映される。

 浴衣に身を包んだ彼女とデートを楽しんでいると、金魚すくいのイベントが発生。女の子と一緒にかがんで、右手で金魚をすくう。このときも左手はガッチリとつないだままだ。女の子に(かわいい声で)「すごい! こんなに金魚すくいが得意だとは思わなかった!」とほめられるたびに頬が緩んでしまう。

photophoto 金魚すくいで格好いいところを見せようとしている記者

 現実世界のマネキンは直立不動だが、腕の部分にメジャーが仕込んであり、手を引っ張ると伸びる仕組みになっている。そのため、映像内で女の子がかがんでいるのに、手が高い位置から動かない――という心配はない。

photo 腕の部分が伸びる

 金魚すくいで得意げになった記者は輪投げにも挑戦し、ゲットした景品を女の子にプレゼント。打ち上がる花火を2人で眺めながら、平成最後の夏をかみしめた。

「女の子から褒められたかった」

 「女の子から褒められたかった」――制作者の1人、中垣孝太さんは笑う。この作品は、中垣さんら5人が大学在学時、卒業制作として完成させた。VRコンテンツでは、ユーザーと対面するようにしてキャラが登場する場合が多い。しかし中垣さんらは「対面したまま歩くデートはあり得ない」と考え、手をつなぐ感覚を再現することで「キャラがユーザーの視野に入っていないといけない」という制約の打破を試みた。

 より人間の手の感覚に近づけるため、マネキンの手(シリコン製)にはベビーパウダーをまぶした。女の子の髪形、浴衣のデザインは、学生の間でアンケートを行って決めたという。

 ただ、制作したメンバーは卒業後、別々の企業に就職。今後の展開は決まっておらず、ゲーム関係者が参加するCEDECには「出口を探す目的でも出展した」という。「作品を生かせるチャンスがあればとは思っている」(中垣さん)

photo 左から制作メンバーの吉田彩乃さん、中垣孝太さん、佐々木貴郁さん

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