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改正著作権法が日本のAI開発を加速するワケ 弁護士が解説「STORIA法律事務所」ブログ(2/7 ページ)

» 2018年09月06日 08時00分 公開
[柿沼太一ITmedia]

 条文は以下の通りです。

第四十七条の七  著作物は、電子計算機による情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の統計的な解析を行うことをいう。以下この条において同じ。)を行うことを目的とする場合には、必要と認められる限度において、記録媒体への記録又は翻案(これにより創作した二次的著作物の記録を含む。)を行うことができる。ただし、情報解析を行う者の用に供するために作成されたデータベースの著作物については、この限りでない。

 簡単に言うと「情報解析」のためであれば、必要な範囲で、著作権者の承諾なく著作物の記録や翻案ができる、というものです(ただし一部例外あり)。

 従って「情報解析」に「機械学習・深層学習」が含まれるとすれば、「機械学習・深層学習」のためであれば著作物について著作権者の承諾なく自由に記録や翻案ができる、ということになります。

 そして、この点については、私が知る限りでは、「情報解析」に「機械学習・深層学習」は含まれる、すなわち「機械学習・深層学習」に著作権法47条の7は適用されるという意見が多数を占めていると思います(後述しますが、この点については改正法ではより明確になりました)。

 そのような見解に立つと、たとえ他人の著作物であっても、機械学習・深層学習のためであれば著作権法47条の7により無許諾で自由に利用できる、ということになります。

 さらに、この条文の最大のポイントは、「非営利目的の利用」に限定されていないことです。

 つまり営利目的(販売・有償提供目的)の学習済みモデル生成のためにもこの条文は適用され、営利目的であっても著作物の「記録・翻案」が可能なのです。

 ちなみに諸外国でも日本著作権法47条の7と同趣旨の規定はあるのですが、いずれも非営利目的の開発や、研究機関による開発の場合にのみ許容されていますので、営利目的の場合でも適用がある日本著作権法47条の7は、世界的に見ても特異的といわれています。

 つまり、端的に言うと「著作権法47条の7は日本の機械学習の宝」であり「機械学習するなら日本においで」ということになります。

よくある質問

 私はセミナーなどでこの著作権法47条の7を紹介することも多いのですが、そのたびに参加者の皆さんからは、声にならない驚きの声が上がります。私の手柄でも何でもないのですが少し気持ちの良い瞬間です。

 ただそのたびに、よく受ける質問がありますので、以下に整理しておきます(ちなみに、以下の質問と回答は改正著作権法の下でも同様に当てはまります)

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