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改正著作権法が日本のAI開発を加速するワケ 弁護士が解説「STORIA法律事務所」ブログ(3/7 ページ)

» 2018年09月06日 08時00分 公開
[柿沼太一ITmedia]

1:日本著作権法47条の7が適用されると著作物の無断利用も適法になるということだが、外国のサーバ上で学習作業を行ってもこの47条の7は適用されるのか

 これは、著作物の利用行為の準拠法の問題(ある利用行為にどこの国の法律が適用されるかの問題)ですが、著作権法については、著作物の「利用行為地」における法律が適用されるとされています。

 ただ、特にネットを利用した利用行為の場合、どこが「利用行為地」であるかの解釈は難しい問題です。

 1つの考え方としては、「サーバの所在地」が利用行為地であるというものですが、A国にいる人がB国に所在しているサーバを利用して学習行為を行った場合にA国の著作権法が適用されるのか、B国の著作権法が適用されるかは難しい問題です。

 ただ、「日本国内にサーバがあり、日本国内にいる人が同サーバを利用してデータのダウンロードやラベル付け、学習行為を行う」ケースであれば、日本著作権法47条の7が適用されることはほぼ間違いないと思われます。

 なので「機械学習するなら(物理的に)日本においで」ということなのです。

2:国外の権利者(例えばディズニーなど)が権利を持っている著作物を利用する行為についても47条の7は適用されるのか

 これも準拠法の問題ですが、準拠法の問題は「利用行為地」によって決される問題であり「権利者の所在地」は無関係です。

 従って、国外の権利者が権利を持っている著作物についても、日本国内で学習作業が行われる限り、日本著作権法47条の7が適用され適法となります。

 なのでやっぱり「機械学習するなら(物理的に)日本においで」ということなのです。

3:海外の大学や事業者とAI開発に関する共同研究を行う場合、著作権等の法律はどこの国の法律が適用されるのでしょうか(データがあるところ? 作業するところ? 見ることができるところ?等)

 これまでの説明からお分かりの通り、「学習作業をする場所」の国の法律が適用されることになります。

現47条の7の限界

 ただ、現47条の7は、あくまで生データ収集、データベース作成、学習用データセット作成、機械学習、DLを同一の事業者が一連の流れとして行う場合のみにしか適用されません。

 これは、47条の7で許容されている行為が「記録媒体への記録・翻案」のみであること、47条の10(複製権の制限により作成された複製物の譲渡)に47条の7が含まれていないことから導かれる結論です。

 従って、以下のようなケースにおいては現47条の7は適用されず、原則に戻って、著作権者の同意なく行った場合には著作権侵害となります。

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