「2013年に、パナソニックさんから『一緒にフルサイズのLシステムをやらないか』とお誘いがあった。そのときは『ライカT』も『SL』も出す前。協業による、カニバリゼーションなど市場のリスク面や、当時のイケイケなデジタルカメラ市場だったということもあり、『ライカは独立してやるべきだ』という思考があった。そのため、一度はお断りした」と杢中さん。
「一方で、カメラがデジタル時代になってからいろいろな開発投資があった。社内では議論があって、ドイツの自動車メーカーがやっているようなプラットフォームの協業化はできないものかと考えていた」(杢中さん)と、カメラでの協業の可能性は模索していたという。
その後、2015年にフルサイズミラーレスのライカSLを発表。「自信満々の商品ではあるが、プロ用のカメラといえるほどのレンズラインアップを自社でそろえるのは大変で、時間もかかるという課題があった」(同)という。
「そんなときに、再びパナソニックさんから『Lマウント』を使わせてほしいという申し入れがあった。われわれも考えが変わっていて、単独でやるよりも協業する方向性が正しいのではないかと。なので、一緒にやっていこうと前向きに検討を始めた」(同)
ライカとしては、パナソニックがLマウントレンズを作ることでレンズラインアップが増える。パナソニックとしては、Lマウント規格に乗ることでフルサイズ向けのレンズ設計ができ、ライカブランドにも乗っかることができる。
そして、このWin-Win関係をさらに強化するのがシグマの存在だ。シグマに話を持ちかけたのも、パナソニックの山根事業部長。2017年2月の「CP+2017」でシグマの山木和人社長に声を掛けた。まだライカとのLマウントアライアンスも正式に決まっていない中の、見切り発車だった。
アライアンスに参加するメリットを、シグマの大曽根康裕部長(商品企画)は次のように語る。
「シグマもSAマウントを持っているが、一眼レフ専用。これからミラーレスという時代に、自社独自のミラーレスマウントを育てるのは難しい。ミラーレスのマウントを育てるのはソフトウェア技術だと思っていて、その点で技術を持っているパナソニックさんがいることと、20mmのフランジバックでカメラボディとレンズのバランスが取れているLマウントは魅力的だった」(大曽根部長)
シグマがLマウントレンズを開発することは、ライカとパナソニックにとって魅力だが、シグマはレンズ開発のみにとどまるつもりはなく、同社のFoveonセンサーを搭載したフルサイズミラーレス一眼カメラの開発も表明している。
Foveonセンサーは、一般的なイメージセンサーのカラーフィルター配列であるベイヤー配列と異なり、高周波な被写体の色パターンから発生する偽色が原理的に起こらないイメージセンサー。高い解像力を誇ることから、Foveonに魅せられるシグマファンも多い。
こうして、3社のカメラボディとレンズを相互に交換できる強力な同盟関係が出来上がった。
フルサイズミラーレス「LUMIX S1/S1R」の発売は、2019年春。先行するソニー、ニコン、キヤノンという猛者がひしめくフルサイズミラーレス市場に、Lマウント同盟はどれほどの存在感を示すのだろうか。
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