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インタビュー
» 2018年11月28日 17時41分 公開

言葉はいらない 「IoT鳩時計」が作る新しいコミュニケーションのかたち

OQTAの「IoT鳩時計」は「時間」を知らせない。スマートフォンのアプリでボタンを押すと「ポッポ」と鳴くだけだ。しかし、「そこがいい」と玩具クリエイターの高橋晋平氏は語る。

[芹澤隆徳,ITmedia]

 OQTAの「IoT鳩時計」は「時間」を知らせない。スマートフォンのアプリでボタンを押すと「ポッポ」と鳴くだけだ。時計としての利便性は低く、コミュニケーションツールとしては明らかに機能不足だが、「そこがいいんです」と玩具クリエイターの高橋晋平氏は熱弁する。現在はOQTAのエンジニア、高橋浄久氏と二人三脚でIoT鳩時計の開発に取り組んでいるという。

高橋晋平氏と「OQTA HATO しろ」

 高橋晋平氏といえば、バンダイ在籍時に「∞にできるシリーズ」など50以上の玩具開発に携わり、相次いでヒット飛ばしたアイデアマン。2014年に独立・起業し、47都道府県の民芸品で戦うカードゲーム「民芸スタジアム」や“億り人”をテーマにしたボードゲーム「THE 仮想通貨」など時流を捉えた玩具開発で注目を集めている。

 一方のOQTA(東京都港区)は、15年創業のITベンチャー。もともとARアプリやVRグラスの開発を手掛けていたが、スマートフォンカメラのリモートシャッターアプリを開発したとき、高橋浄久氏が「音だけのコミュニケーションツール」というアイデアを思い付いた。

 当初は鳩時計以外のスタイルも検討していたが、そのころ合流した高橋晋平氏が鳩時計を猛プッシュ。「鳩時計を見て、志願するような形で事業を手伝うようになりました。これはいろいろな人を幸せにするアイテムだと確信したんです。何より自分で使ってみたかった」という。

 「IoT鳩時計は、コミュニケーションにかけるコストを最小化したものです。意味は伝わりません。でも、誰かが自分のことを思い出してボタンを押したことだけは確か。ネガティブな気持ちに絶対にさせないコミュニケーションです」(高橋氏)

「OQTA HATO もく」

 17年秋には木製のIoT鳩時計「OQTA HATO もく」を開発し、「Makuake」でクラウドファンディングを実施。目標金額の100万円に対して600万円を超える支援を得ることができた。

言葉のないコミュニケーションの効果

 スマートフォンにSNS、言葉を伝える手段は多様化し、ますます手軽になる一方で、便利なコミュニケーション手段が「必ずしも良い結果をもたらすとは限らない」と高橋晋平氏。「既読スルーなんて言葉もありますが、手軽に話しかけて期待する返事が返ってくるとは限りません。でも鳩は鳴くだけ。聞いた人はその意味を勝手に想像します」

アプリの画面をタップするだけ
鳩が顔を出してポッポー

 田舎の実家にIoT鳩時計を置いた。両親は孫が鳩を鳴かせていると勝手に思っていた。自宅にもIoT鳩時計を置いた。奥さんに「いつもありがとう」などと伝えるのは気恥ずかしいが、鳩を鳴かすことはできる。子どもは鳩が鳴くと喜んだ。

 ちょっとした事件もあった。

 「妻が疲れていて、子どもを叱る際、ちょっと当たるような感じになったそうです。そのとき、ちょうど僕が出先から鳩を鳴かせたんです」

 ポッポ。

 鳩の声で奥さんは我に返った。鳴かせた本人は、単に「遅くなってゴメン」のつもりだったが、鳩の声を聞いた側は心を見透かされたような気になったのかもしれない。「もちろん偶然です。でも、これがLINEで『呑んで帰る』だったら火に油を注いだかもしれませんね」と高橋晋平氏は笑う。言葉は伝えなくても、言葉以上に伝わるものもあるという。

 現在、IoT鳩時計は木製の「OQTA HATO もく」と外装を樹脂にして価格を抑えた「OQTA HATO しろ」の2種類がある。それぞれWi-Fiモデルと3Gモデルがあり、価格は1万7064円(税込み、しろの3Gモデル)から。3Gモデルは別途月額1058円(税込)の通信料が必要になる。

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