ITmedia NEWS >
くらテク マネー

インデックス投資の元祖ブロガーは、どうやって株価暴落に耐えたのか 水瀬ケンイチさん個人投資家列伝(2)(2/3 ページ)

» 2018年12月01日 10時40分 公開
[斎藤健二ITmedia]
※本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

生活防衛資金はいくら用意したらいいのか?

 ファイナンシャルプランナーも各種の投資本も、必ず説くのが「投資の前に生活防衛資金を用意しなさい」ということ。これは病気やケガ、退職などに備えて、イザというときのために取っておく現金相当の資金を指す。投資資金とは別に持っておくことで、急にお金が必要になったときも投資資産を売ることなく生活できる。

 しかし生活防衛資金をいくら用意したほうがいいのかについては、生活費3カ月分から数年分までさまざまなことがいわれている。水瀬さんは「生活費の2年分」だと話す。

 「木村さんの『投資戦略の発想法』で読んで感銘を受けたのが生活防衛資金の考え方です。2年分は多すぎると思うかもしれませんが、何が起きても、会社をリストラされても災害にあっても、自分と家族の生活を守れる地盤を固めた上で(投資は)やるものだと」

 実際リーマンショックの際には、会社をリストラされてしまったが11カ月かけて再就職先を探し、結果的に待遇の良い就職先を見つけたという人もいる。3カ月程度の生活資金では、当座の生活はなんとかなるかもしれないが、再就職の際に自分を安売りせざるを得なくなる。少なくとも1年は転職活動にかけられるくらいの余裕を持つことが重要だというのが水瀬さんの考えだ。

 「『2年分は多い。それだけのお金を作れないから投資をするんだろう』と怒られたりもしますが、年収の2年分ではなく生活費です。だから節約生活をすることも大事になります」

どのくらいのリスクを取るべきか?

 資産運用のポートフォリオを組む際に、必ず出てくるのが「自分が耐えられるリスクにしておきましょう」という言葉。では何を目安に「耐えられるリスク」を考えたらいいのだろうか?

 「まず貯蓄可能額があたります。年に100万円貯蓄できる方なら、それだけの額を失っても1年でばん回できるという考え方です。もうひとつは(日本の公的年金を運用する)GPIFのリスクに合わせる方法です。GPIFはディフェンシブなので、それと同じ許容度にしておけばリスクを取りすぎではないはず。年率10%程度が無難でしょう。あとは夜ぐっすり眠れるか? それが最終的には重要です」

 いくつかの考え方があるが、資産の変動が気になって夜眠れなくなったらリスクの取りすぎだ。水瀬さんは、リーマンショックの際に1年で資産が半減したが、そのときも毎晩ぐっすり眠れたと話す。

 「自分が楽観的ということもありますが、たっぷり生活防衛資金があるので、投資資金が増えたり減ったりしても関係ないやと思えたんです」

暴落中に売りたくなったらどう耐えるか?

 インデックス投資は「安く買って高く売る」ではなく、経済成長に伴う株価の上昇を長期間かけて享受しようという手法だ。だから、株価が暴落した際にも、売って逃げ出したいという気持ちを何とか抑えて、持ち続けることが大事。しかし、リスクが高いポートフォリオであるほど売りたい気持ちに負けてしまいそうになる。水瀬さんは、どう耐えてきたのだろうか。

 「インデックス投資を始めようと思ったときに参考にした本を読み返すというのが一番効きます。ニューヨーク・ダウの数十年のグラフを見るとか、インデックスを構成している上位の銘柄を見るとか細かな方法はいくつかありますが、平均株価が長期的に右肩上がりに推移することが期待できる、期待リターンがプラスだということを信じられるかどうかです」

 水瀬さんは、「インデックス投資の古典や名著から勇気を分けてもらう」と表現している。古典としてお勧めするのはやはり『ウォール街のランダム・ウォーカー』だ。

 「500ページもある分厚い本ですが、本当は『ウォール街のランダム・ウォーカー』をお勧めしたい。この本を読んでインデックス投資原理主義者になってくれというわけではないんです。この本では、全部の投資手法を学べて、でも(比較した結果)インデックスがいいですよ、と言っています。全部の投資法を網羅しています」

 もちろん、水瀬さんの近著『お金は寝かせて増やしなさい』も、インデックス投資のエッセンスがまとまっていて勇気を分けてもらえる本だ。さらに、水瀬さんは竹川美奈子さんの著書や、山崎元さんの著書の中で易しく書かれたものもお勧めしてくれた。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.