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日本で暮らしているのに海外投資が必要な2つの理由渋谷豊の投資の教室(1/3 ページ)

» 2018年12月27日 08時04分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 日本人の投資観を探っていく連載「渋谷豊の投資の教室」。第5回は、分散投資の中でも国際分散投資について考えていく。日本で暮らしていて日本でモノを買って、将来も日本にいるつもりの人が、どうして海外へ投資する必要があるのか?

 「お金の教養」を身につけることを目指した総合マネースクール、ファイナンシャルアカデミーの渋谷豊取締役に、国際分散投資について聞いてみた。聞き手は編集部サイトウ。

ファイナンシャルアカデミーの渋谷豊取締役

海外への投資、国際分散とは?

サイトウ: 前回、分散投資が大事という話をしてもらいました。ところで分散といった場合、日本だけではなく国際的に分散しよう、という話を聞くことがあります。でも、ぼくは日本にずっといるつもりなんですが、ドル資産とかを買う必要があるんでしょうか?

渋谷: 国際分散の意味合いは大きく2つあります。円で給料をもらって円で生活をしている場合、円が国際的な価値を保っている限り生活できます。しかし、為替が変動相場制である以上、実際は円高や円安の影響を受け入れざるを得ません。

 円安の何がまずいかというと、インフレになる可能性が高くなることです。日本は資源などを輸入に頼っている国です。例えば原油。円安になると円換算での原油の値段が高くなり、ガソリン価格が上がります。

 極端ですが、ガソリン価格が1リットル200円くらいになった時に、ドライバーや運送会社や航空会社がハッピーかと言うと、そんなわけはありません。石油によって作り出されるものは世の中にたくさんあります。

 みんなが大好きなAmazonに注文すれば、ほぼダンボールに梱包されて自宅に届きます。なぜか洗剤など小さな物もとても大きいダンボールに入って。また、その中に入っているビニールで洗剤が動かないように固定されています。このビニールやダンボールも、全て石油を使って作られているわけです。ちなみに化粧品やプラスチックなども石油製品です。ということで、円安になれば、おのずと物の値段が上がります。そうすると今度はAmazonが顧客に対して価格転嫁として手数料を上げます。これは普通の企業行動なので、他の企業も同じ行動を取ります。

 そして、円換算のガソリン価格が上がったことで宅配便の配達料も値上がりします。このように原油価格の上昇が、どんどん商品価格に転嫁されて、徐々に物価が上がり、そしてインフレ傾向になる。このように日本は資源を輸入に頼っている国なので、円安になるとインフレになりやすい体質なんです。

 一方で、日本は貿易黒字なので基本的に円高になりやすい国です。ただし、日本は財政が大変な状況ですし、低金利です。貿易黒字もこれから減少していくかもしれません。そのため、今後は円安方向に向かう可能性もあります。

物価指数とドル円為替レートの長期推移。物価が下がるに従い、長期的には円高傾向にあることが読み取れる。(公益財団法人 国際通貨研究所のドル円購買力平価と実勢相場より)
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