ITmedia NEWS >
くらテク マネー

日本で暮らしているのに海外投資が必要な2つの理由渋谷豊の投資の教室(2/3 ページ)

» 2018年12月27日 08時04分 公開
[斎藤健二ITmedia]

渋谷: 国際収支からみると日本はそもそも円高になりやすい体質だけれど、将来的に円安になる可能性があるということを、これを読んでいるような若い人たちはぜひ意識しておいてほしいと思います。過去20年間の日本は強烈なデフレだったけれども、これからは徐々にインフレになるかもしれません。

 もし、インフレになると毎年物の値段が上がっていきます。今までは100円ショップに行けば、「こんな物がこんな安い値段で買える」というデフレの時代でした。ところが100円ショップではあまり良いものが手に入らない、200円ショップに行って初めて以前の100円ショップで売っていた物が売っている。そういう時代になるかもしれない。

サイトウ: ぼくらは社会に出てからずっとデフレの時代に暮らしてきて、モノの値段は安くなっていくのが当たり前のように感じていました。でも、これからはインフレになるかもしれないということですね。インフレは体験したことがないので、実感がわかないのですが、話を聞くと怖そうです。どう防衛しておけばいいんでしょう?

渋谷: このような物価上昇からどうやって身を守るか。そのひとつの方法として海外投資という発想が出てくるのです。多くの人達の給料は、日本の景気や働いている企業の業績に依存し支払われています。会社の成長や国の成長に連動して給料をもらっているといえます。

 ところが海外に目を向けると、日本よりもすごく成長している国が数多くあって、賃金もその成長に連動して上昇している。とてもうらやましい状況です。日本の企業を辞めて、その国の企業に転職して働くという選択肢もあるでしょうが、それほど簡単ではありません。でもせめて彼らの経済成長の成果を自分のものにしたいなと思うかもしれません。

 ところで、日本の平均賃金が悲しい状況になっていることを知っていますか? 1997年と2017年の日本の平均賃金を比較するとなんと約12%も下がっています。20年も歳月が過ぎているのに賃金が下がっている。これでは働くことに夢がもてませんね。同じ20年間で英国は25%、ドイツだって15%くらい給料は増えているわけです。でも、私たちは12%も減っている。先進国に比べて給料の格差がどんどん開いている。

実質賃金指数の推移を海外と比較したグラフ(全労連資料より)

 多くのみなさんが勘違いしていることがあります。最近は訪日者数が増加し、外国人が日本に来る環境が整ったとか日本の文化が注目を集めているとか、だから3000万人も訪日するようになったと喜んでいますが、本当の理由は実はそこじゃないと思うわけです。たぶん、日本に来やすくなった理由があるからなのです。

 でも、為替レートは大雑把にいえば100~120円くらいであまり変わっていない。円が極端に安くなって来やすくなったわけではないんです。本当は、日本に訪れる人たちの所得は毎年上がっていることで日本に訪れる渡航費や滞在費が以前より安くなったと感じているからなんです。一方で僕らが米国やヨーロッパに行った時に安く感じないのは、為替の問題もありますが、本当は自分たちの給料が上がっていないからなんです。

 日本で働いている以上、そう簡単には給料が増える環境ではないかもしれない。また、お金は預けないと増えませんが、選んだ預け先の成長スピードでしか増えていかない。であれば、日本ではなく海外の成長性の高いところに分散しましょうという発想が出てくるわけです。このような理由から国際分散の優位性が説明されています。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.