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筋トレも投資も、効率性よりも「続けること」が重要 虫とり小僧さん個人投資家列伝(5)(2/2 ページ)

» 2019年01月29日 14時27分 公開
[斎藤健二ITmedia]
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 しかし、再度の転機は同僚の運用パフォーマンスと比較したときに訪れた。もともと同僚に資産運用の方法を聞かれて、「世界株投資のバランスファンドを1つ持っていればいい」とアドバイスしたのだという。ところが、ある時その同僚と運用パフォーマンを見せ合ったところ、なんと負けていたのだ。

 「海外ETFのコストを見て、0.1%低ければそこに乗り換えたり、資産配分の効率も考えてやっていた。同僚にはバランスファンドとアドバイスしたが、でも俺はもっとうまくできるぜ、と思っていた。計算に計算を重ねて、毎日小一時間かけていたのに、なんで、何もしていないやつに負けるんだ……と」

 そこからは、「コストパフォーマンを考えると何もしないほうがいい」にスタイルが切り替わった。3年かけて一部持っていたアクティブファンドを売却し、ほぼインデックスに変更した。

 「どれが上がるか下がるかは分からないので、バランスファンドを中心にした。ちょっとくらい(自分の手腕で)増やしたいと思って、先進国と新興国のファンドも足している」

モーニングスターが提供する資産クラス別の年次リターン(円換算)を見ると、毎年のリターンは、特定の資産クラスが良いということはなく、見事にさまざまな資産にバラけていることが分かる

 重要だと感じているのは、リバランスだ。株式や債券などいろいろな資産をバランス良くもつなか、一部の資産が値上がったら売却し、逆に値下がった資産を購入することで、各資産の比率を保つように調整している。

 「(リバランスの結果)リーマンショックのときに果敢に買い増して、アベノミクスのときにしっかり売った。自分の感覚でいまは高い、安いは信用できないが、機械的に買って売ることの効果があった」

 無リスク資産といわれる現金は、総資産の半分を目安にしている。

 「生活防衛資産の意味合いもあるが、リーマン級の下げが来たらガンガン買うという山っ気もある。半々はすごく分かりやすい」

 最後に、投資の初心者にお勧めの投資法を聞いてみた。

 「投資に回せる拠出額が、つみたてNISA内(年間40万円)なら、悩むことなくつみたてNISAだと思う。種類が160本あることで、eMaxis Slimシリーズなど低コスト化も一気に進んだ。手間をかけないことを考えると、NISAはロールオーバーなど面倒が多い」

 もともと投資マニアとして、ポートフォリオを細かく調整したり、少しでも信託報酬が安いファンドを探したりと試行錯誤してきた虫とり小僧さんだが、その後の経験でたどりついたのが手間をかけずに投資を継続できることが最も重要だという考え方だ。

 「人よりうまくやりたいから投資を始めるんですね。株は上がったり下がったりするが、下がった時に買って、上がった時に売ればと思ってしまう。欲が出てくる。そこをぐっとこらえて我慢する。それを続けるのが難しい。筋トレをやっていたんですが、筋トレも株も、ほどほどでいいから続けることが重要。(投資の)マニア目線でいうと、バランスファンドがいいとか、トラッキング・エラーの大きさとか、いろいろとあるが、遠くから見ればほとんど変わらない。効率的かコストが安いかというより、自分にとって続けやすいものになっているかが、最も重要」

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