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不動産を買ったらお金持ちになったのか、お金持ちだから不動産を買ったのか渋谷豊の投資の教室(3/3 ページ)

» 2019年02月21日 13時18分 公開
[斎藤健二ITmedia]
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渋谷: 逆に不動産で失敗する人の特徴は、不動産の値上がりだけを狙っている人です。1億円で買って2億になるだろう、シメシメと思っている人ですね。日本のある会社がバブルのときに14%くらいの金利でお金を借りて、ハワイとかニューヨークとかの物件を買ったんです。家賃収入はというと5%でした。ということは、8%くらいマイナスになるのですが、「いやいや大きく値上がりするから」と決め込んで大失敗しました。不動産投資の典型的な失敗例です。

 家賃収入が見えていて、借入や金利の返済を計算できる人が成功をつかむ。安定的に資産を形成しやすいんです。

投資における、収入と資産の関係

 資産にはP/LとB/Sという考え方があります。多くの人が勘違いしているのは、将来を考えたときに給料を伸ばそうとするんですよ。給料が今年も50万円上がった! 夢の4桁! 確定申告したいな、とか。これ自体はいいことだと思うんです。そういう人がいないと経済も企業も成長しないので。

 でも、もし病気になったらその給料は受け取れなくなるかもしれません。P/L、つまり売上や収入に頼った生活は、バブルが崩壊したり景気が悪化したり世の中の環境や、自分が病気になった、など環境が変化するとうまくいきません。Profit & Loss(P/L)のProfitは大きく変動するんです。

 しかし、B/Sは、そう簡単には崩れません。不動産で考えてみましょう。1億円の物件を買いました。2000万円頭金、8000万円借り入れしました。家賃収入からローンを返していっているので、純資産価値が2000万円から3000万円、4000万円と上がっていきます。世の中の環境が悪化して、P/LのProfitには大きな影響があっても、人が払ってくれるB/Sについてはそんなに影響がない。当然その時の価格変動はあっても時間が経てば戻りますし。

 借入をうまく使うと、人が払ってくれる家賃収入をもらいながら、自分の資産を増やしていくことができる。だから、不動産で財をなした人が多いといわれているわけです。

サイトウ: 最初に頭金は必要でしょうけど、なるほど不動産は重要な投資先なんですね。

渋谷: 不動産も株も債券も、よこしまな気持ちを持った時点で崩れていくんですよ。よく海外投資にある話ですが、借り入れ金利が6%くらい。家賃収入は4〜5%なので少しマイナス。でもこの投資をする地域は人口も増えているし開発も進むし明らかに伸びますよとかいって東南アジアの物件を紹介したりするわけですが、ほぼ値上がりしないんですよ、残念ながら。その結果、どんどん金利負担が増えて持ち出しが増えて、最終的には大損してギブアップする人がいるんです。

 でも家賃から借り入れが十分に返せるという鉄則を守れば、そんなにミスは起きない。このような一発勝負は資産運用においてリスクが高すぎます。

サイトウ: 銀行から借り入れをするので、金利が上がるとまずいことになりますよね。

渋谷: 投資で成功するには、数字を自分で計算できる能力が不可欠です。過去の歴史上、金利はこのくらいまで上昇する可能性があるけど、それでも返済は耐えられるのかなど、大幅な金利上昇まで織り込んで計算することが必要です。あとは修繕費や保険などの細かい数字も把握しなくてはいけない。一回覚えておけばそんなに難しいものではないんですが、最初の勉強はやはり必要ですね。

話し手 渋谷豊

ファイナンシャルアカデミー取締役。中上級者向け講座では教壇にも立つ。大学卒業後、邦銀勤務を経て、慶應義塾大学大学院 経営管理研究科(MBA)を修了。その後、米系、仏系銀行のプライベートバンク部門にて、富裕層の資産運用業務に13年間従事。2008年の世界的金融危機を体験し中立的な金融アドバイスの必要性を痛感し、独立系投資顧問会社代表に就任した後、さらに幅広い層に金融経済教育を広めるためファイナンシャルアカデミーに参画。現在は投資信託スクールでの講師のほか、Jリーグの選手への講演等も行う。ファイナンシャルアカデミー

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