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高齢者の一人暮らしをスマート照明で見守るサービス、ソニーが提供 不動産会社も注目

» 2019年03月08日 20時27分 公開
[芹澤隆徳ITmedia]

 ソニーネットワークコミュニケーションズは3月8日、センサーや通信機能を搭載したシーリングライト「マルチファンクションライト」を活用し、賃貸不動産向けの高齢者見守りサービスを6月から提供すると発表した。不動産投資や賃貸管理を手掛けるランドネット(東京都豊島区)、シーラ(渋谷区)の2社と協力し、同日より受付を開始した。利用料金は月額1000円(予定、初期費用別)。

「マルチファンクションライト」

 マルチファンクションライトは、ソニーが2016年に発売したスマート照明だ。ドーナツ型の「LEDシーリングライト」と、その中心に合体させる本体「マルチファンクションユニット」で構成され、本体部分にはWi-Fiや家電操作のための赤外線送出部、各種センサー、マイク、スピーカーなどを搭載。スマートフォンアプリ「MF light」で照明、テレビ、エアコンを操作できる他、スマートフォンなどからの音楽再生やボイスメッセージなど多彩な機能を備えている。

見守りサービスのシステム概要

 今回の見守りサービスでは、マルチファンクションライト(LGTC-20)の人感センサーと照明の操作履歴を活用する。これらのログをクラウドで常時管理し、一定の期間、記録がないと異常と判断。まずライトに内蔵されているスピーカーで入居者に「大丈夫ですか?」と呼びかける。反応がないと、入居者のスマートフォンなどに安否確認メールを送信。そのメールも開封されなかった場合、離れて暮らす家族やマンションの管理会社に連絡する仕組みだ。管理会社などが提供する駆けつけサービスとも連携する。

管理会社向けに部屋ごとのログを一覧できる管理画面も用意した

 ソニーネットワークコミュニケーションズでは、「一般的な見守りサービスにはカメラを使用する場合が多いですが、入居者が『見張られている』といった心理的障壁を感じることもあります。(マルチファンクションライトの)人感センサーのライフログを使うことで、入居者の生活の邪魔にならない、ゆるやかな見守りサービスが提供できます」と話している。

不動産オーナーや管理会社が注目

 マルチファンクションライトを開発した横沢信幸氏(ソニーネットワークコミュニケーションズ IoT事業部門 事業推進部 L-Gadget課 課長、工学博士)は、見守りサービスについて、「製品の開発時には想定していませんでした」と振り返る。「ユーザーの声がきっかけでした。機能的にはソフトウェアアップデートで対応できます。しかし、それがマスの声なのか分かりませんでした」(横沢氏)。そこで付き合いのある不動産会社に相談に行き、初めて市場性があると分かったという。

左からシーラの栗林春子氏、ソニーネットワークコミュニケーションズの横沢信幸氏、ランドネットの百井遼平氏、山崎静香氏(人事戦略部 採用研修課)

 高齢化や核家族化で一人暮らしの高齢者が増える中、孤独死といった社会問題も浮上している。見守りサービスがあれば入居者の急な体調悪化などに対応でき、万が一の場合でも事故物件化を防げる可能性も出てくる。

 ランドネットの百井遼平氏(賃貸事業部 管理課 係長)は、「見守りサービスで賃貸物件のリスクを軽減できます。こうしたサービスについては以前からオーナーから相談や問い合わせを受けており、潜在需要はかなり高いです」と話す。

 仮に事故物件となれば家賃や不動産価値が大きく損なわれてしまうため、入居希望者が高齢者というだけで不動産オーナーが入居を断るケースもあるという。また連帯保証人の代わりに契約する家賃保証会社が承認しない例もあった。

 シーラの栗林春子氏(建築マネジメント部主任)は、見守りサービスの導入でオーナーや家賃保証会社の審査のハードルが下がる可能性を指摘する。「例えばこれまで65歳以上は難しいと判断していた物件が、70歳までは可になるといったケースが出てくるかもしれません。少なくとも選択肢は増えると思います」(百井氏)。入居者にとってもメリットは大きい。

照明のオン/オフ、人感センサーの反応に加え、温度や湿度もモニタリング可能

 2020年4月1日に施行される改正民法では、連帯保証人制度が変更され、契約書で極度額(連帯保証人の責任限度額)を定めることになった。今後は連帯保証人より家賃保証会社の比重が増すと予想されており、同時に見守りサービスの需要も増えていくかもしれない。

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