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旅行にぴったりな軽量広角レンズ「COLOR-SKOPAR 21mm」をソニー「α7RIII」で試す

» 2019年04月29日 07時00分 公開
[林佑樹ITmedia]

 フルサイズEマウントレンズは、ソニー純正のラインアップを見てみると基本的に「デカくて重い」。GMシリーズ展開をはじめてからがとくに顕著だ。例外的に「FE 24mm F1.4 GM SEL24F14GM」はそうでもないが、依然としてコンパクトとは言いがたい。

 都内某カメラショップに立ち寄ったところ、馴染みの店員が無言で「Voigtlander COLOR-SKOPAR 21mm F3.5 Aspherical E-mount」(以下、COLOR-SKOPAR 21mm F3.5)を目の前に置き、次のような呪文を唱えた。

 「ジャックス サイダイヨンジュウハチカイ キンリムリョウ ジッシツムリョウ」

 すると、どうだろう。「iPhone XS Max」購入の後で予算の少ない筆者の手に、COLORーSKOPAR 21mm F3.5(税別8万5000円)があった。世界には、まだまだ不思議がいっぱいだ。というのが2018年10月のことである(編注:計画的なご利用を)。

 そういったいきさつから、本稿ではソニーフルサイズEマウント向けに設計されたCOLORーSKOPAR 21mm F3.5をチェックしていく。お散歩にちょうどいい軽さで、小さくて描写のいいレンズが欲しい、できれば10万円以下で! そんな人にザクザク突き刺さるレンズだ。

「SEL2470GM」が重いしデカいしと、お悩みのあなたにジャストフィット

 COLORーSKOPAR 21mm F3.5はソニーEマウント向けの単焦点マニュアルフォーカス(MF)レンズ。MFレンズながら電子接点を持つためEXIF情報を記録できる他、ボディ内手ブレ補正も自動的に設定される。フォーカスリングはほどよく重く、フォーカスを合わせやすい。この辺りは他のフォクトレンダーレンズも同様だが、毎度ながらフォーカスリングの重さは絶妙だ。

直径62.8ミリ×長さ39.9ミリ、約230グラム

 遠景については、日中の場合、F8〜11ほどまで絞り、∞のところに合わせておくだけで、深い被写界深度を得られる。移動がてら風景やスナップを撮るくらいであれば、フォーカスをあまり考えなくてもいい。2〜5メートルレンジの被写体を撮る場合でもそれなりにフォーカスが合うため、その点では初めてのMFレンズに向いているといえる。またピント拡大やピーキングをカメラ側に設定しておくことで、より焦点を合わせやすくなる。

フィルター径は52ミリ

 21mmというと、スマートフォンのアウトカメラが35mm判換算24〜28mmなので、それよりもさらに広い。どちらかといえばインカメラの画角に近い。24mmから3mm違うだけなのだが、電子ビューファインダーから見える風景は大きく広がる。また広角になるほどパースペクティブも露骨に強調されていくのだが、21mmの場合はほどよい遠近感。広角をあまり意識しないで撮影もできればメリハリを付けた撮影もでき、なかなか都合のいい焦点距離だ。最短撮影距離20センチであるのもポイントだろう。例えば小旅行に行くとき、COLORーSKOPAR 21mmだけでも風景撮影からテーブルフォトまで、ほとんどのシーンに対応できてしまう。

お散歩用としてはとても気軽な印象。画角は91.2度になる。35mm判換算21mm、F8、1/640秒、ISO250、WB:手動、ー0.3EV、DRO Lv2、ボディ:α7RIII
露骨に「広角」という感じはしない。35mm判換算21mm、F5.6、1/10秒、ISO1000、WB:3200K、+0.7EV、DRO Lv1、ボディ:α7RIII
対角線を上手く利用すると、より広がりを強調することもできる。35mm判換算21mm、F8、1/25秒、ISO1600、WB:3300K、DRO Lv1、ボディ:α7RIII
高さのあるモノ高さのあるモノ 高さのあるモノの場合、接近すると遠近感が極端に分かりやすいので、手にしたらまずチェックしてみよう

 描写は良好だ。周辺光量落ちは絞っても解消されないが、αシリーズのボディ内設定から補正できる他、キツい周辺光量落ちではないため現像アプリで補正しても違和感は少ない。歪みはさすがにあるが、目立つほどでもない。ボディ側での補正もあるため、気にならない人が多そうだ。

散歩撮影以外では、あまり下がれないがなるべく全景を入れたい場所でよく愛用している。筆者の撮影領域では、研究室の撮影で標準レンズ状態になっている。写真は「高エネルギー加速器研究機構」の崩壊点検出器
貞昌院の天蓋。ある程度絞ると細かいディティールの多いオブジェクトにも強い。35mm判換算21mm、F10、10秒、ISO250、WB:オート(White)、+0.7EV、DRO Lv1、ボディ:α7RIII
これも貞昌院の天井。装飾が豊富かつ、天蓋の構造が複雑だが、F8あたりからであれば十分に解像する。35mm判換算21mm、F8、0.5秒、ISO800、WB:オート(Ambi)、-0.3EV、DRO Lv1、ボディ:α7RIII

 しばらく使用しての印象としては、狭い室内で大きな物体を撮影する場合に重宝する他、展示会取材でも愛用している。展示会のメーカーブース全景だけでなく、展示会によくある仕様解説が記載されたポスターの撮影にもちょうどいいのだ。

 ポスターの内容を読んでから撮影しようとするとき、24mmでは少し下がる必要が多く、スマホでも経験のある人はいると思うが、そうしようとすると前に人が入ってきてしまい、少し待つハメになりがちだ。こういったとき、COLORーSKOPAR 21mmだとそのまま撮影できるため、タイムロスが生じにくい。

最短撮影距離約20センチ、倍率1:6.45のため、寄っても意外と広く撮れる。35mm判換算21mm、F8、1/60秒、ISO800、WB:オート(White)、+0.7EV、DROオフ、ボディ:α7RIII
夜景。F13付近の色ノリは好みだ。35mm判換算21mm、F13、30秒、ISO400、WB:3200K(A-B:B4.5、G-M:M2.25)、DRO Lv1、ボディ:α7RIII
保持しやすく、手持ちでの低速シャッターもしやすい。35mm判換算21mm、F7.1、1/5秒、ISO1000、WB:3200K(A-B:B4.5、G-M:M2.25)、+1.0EV、DRO Lv2、ボディ:α7RIII
手前にオブジェクトを置くと奥行きの演出もしやすい。35mm判換算21mm、F8、1/80秒、ISO1600、WB:オート(White)、+1.0EV、DRO Lv2、ボディ:α7RIII

 初めは衝動買いに近い入手経緯だったものの、結果としては24mmでは地味に画角が足りない場所での撮影が増えてきたため、メインのレンズとしてしっかり活用している。冒頭でも触れたように、価格帯とサイズ、重量から選んでも損はないレンズだ。軽やかに振り回せる広角レンズを探しているのであれば、COLOR-SKOPAR 21mm F3.5 Aspherical E-mountは選択肢に入るはずだ。

ライター:林佑樹

ライター・カメラマン。IT/PC/スマートフォン/周辺機器/ゲーム/テクノロジーなどのライティングが多い雑色系ライター。撮影はメカメカしい物体が得意。


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