フルサイズEマウントレンズは、ソニー純正のラインアップを見てみると基本的に「デカくて重い」。GMシリーズ展開をはじめてからがとくに顕著だ。例外的に「FE 24mm F1.4 GM SEL24F14GM」はそうでもないが、依然としてコンパクトとは言いがたい。
都内某カメラショップに立ち寄ったところ、馴染みの店員が無言で「Voigtlander COLOR-SKOPAR 21mm F3.5 Aspherical E-mount」(以下、COLOR-SKOPAR 21mm F3.5)を目の前に置き、次のような呪文を唱えた。
「ジャックス サイダイヨンジュウハチカイ キンリムリョウ ジッシツムリョウ」
すると、どうだろう。「iPhone XS Max」購入の後で予算の少ない筆者の手に、COLORーSKOPAR 21mm F3.5(税別8万5000円)があった。世界には、まだまだ不思議がいっぱいだ。というのが2018年10月のことである(編注:計画的なご利用を)。
そういったいきさつから、本稿ではソニーフルサイズEマウント向けに設計されたCOLORーSKOPAR 21mm F3.5をチェックしていく。お散歩にちょうどいい軽さで、小さくて描写のいいレンズが欲しい、できれば10万円以下で! そんな人にザクザク突き刺さるレンズだ。
COLORーSKOPAR 21mm F3.5はソニーEマウント向けの単焦点マニュアルフォーカス(MF)レンズ。MFレンズながら電子接点を持つためEXIF情報を記録できる他、ボディ内手ブレ補正も自動的に設定される。フォーカスリングはほどよく重く、フォーカスを合わせやすい。この辺りは他のフォクトレンダーレンズも同様だが、毎度ながらフォーカスリングの重さは絶妙だ。
遠景については、日中の場合、F8〜11ほどまで絞り、∞のところに合わせておくだけで、深い被写界深度を得られる。移動がてら風景やスナップを撮るくらいであれば、フォーカスをあまり考えなくてもいい。2〜5メートルレンジの被写体を撮る場合でもそれなりにフォーカスが合うため、その点では初めてのMFレンズに向いているといえる。またピント拡大やピーキングをカメラ側に設定しておくことで、より焦点を合わせやすくなる。
21mmというと、スマートフォンのアウトカメラが35mm判換算24〜28mmなので、それよりもさらに広い。どちらかといえばインカメラの画角に近い。24mmから3mm違うだけなのだが、電子ビューファインダーから見える風景は大きく広がる。また広角になるほどパースペクティブも露骨に強調されていくのだが、21mmの場合はほどよい遠近感。広角をあまり意識しないで撮影もできればメリハリを付けた撮影もでき、なかなか都合のいい焦点距離だ。最短撮影距離20センチであるのもポイントだろう。例えば小旅行に行くとき、COLORーSKOPAR 21mmだけでも風景撮影からテーブルフォトまで、ほとんどのシーンに対応できてしまう。
描写は良好だ。周辺光量落ちは絞っても解消されないが、αシリーズのボディ内設定から補正できる他、キツい周辺光量落ちではないため現像アプリで補正しても違和感は少ない。歪みはさすがにあるが、目立つほどでもない。ボディ側での補正もあるため、気にならない人が多そうだ。
しばらく使用しての印象としては、狭い室内で大きな物体を撮影する場合に重宝する他、展示会取材でも愛用している。展示会のメーカーブース全景だけでなく、展示会によくある仕様解説が記載されたポスターの撮影にもちょうどいいのだ。
ポスターの内容を読んでから撮影しようとするとき、24mmでは少し下がる必要が多く、スマホでも経験のある人はいると思うが、そうしようとすると前に人が入ってきてしまい、少し待つハメになりがちだ。こういったとき、COLORーSKOPAR 21mmだとそのまま撮影できるため、タイムロスが生じにくい。
初めは衝動買いに近い入手経緯だったものの、結果としては24mmでは地味に画角が足りない場所での撮影が増えてきたため、メインのレンズとしてしっかり活用している。冒頭でも触れたように、価格帯とサイズ、重量から選んでも損はないレンズだ。軽やかに振り回せる広角レンズを探しているのであれば、COLOR-SKOPAR 21mm F3.5 Aspherical E-mountは選択肢に入るはずだ。
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