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“値下げ”しても業績伸ばす――KDDI、19年度は増収増益予想 ドコモと真逆の展開に(1/2 ページ)

» 2019年05月16日 05時00分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

 KDDIが5月15日に発表した2019年3月期(18年4月〜19年3月)の通期連結業績は、売上高が前期比0.8%増の5兆803億円、営業利益が5.3%増の1兆137億円、最終利益が7.9%増の6176億円と増収増益だった。営業利益が1兆円台に達するのは同社初。

 20年3月期の通期連結業績は、さらに増収増益の見通しだ。売上高は2.4%増の5兆2000億円、営業利益が0.6%増の1兆200億円、最終利益が0.4%増の6200億円を見込む。

photo KDDIの高橋誠社長

なぜKDDIは増益予想?

 同社は通信事業の目玉として、新料金プラン「新auピタットプラン」「auフラットプラン 7プラス」を6月から、「auデータMAXプラン」を今夏から提供する予定だ

 新「ピタット」はデータ利用量に応じて月額2980円(税別、以下同)から3段階の料金を自動適用する。新「フラット」(月額5480円)はデータ容量が月間7GBまで使える他、SNSのデータ通信を“カウントフリー”とする。いずれも各種割引を併用した場合、旧プランよりも最大4割安くなるという。

 auデータMAXプランは、業界初という月間データ容量に上限がないプラン。基本料金は月額8980円で、各種割引を併用した場合は月額5980円からとなる。

photo KDDIも値下げしたプランを打ち出す

 一方、競合のNTTドコモも、6月から新プラン「ギガホ」「ギガライト」を提供。前者は通信容量が上限(月間30GB)に達した後も送受信1Mbpsで通信可能。後者は、データ利用量に応じて月額料金が変わる仕組みで、1GB程度のライトユーザーは料金が過去のプランから4割ほど安くなる。

 だが、ドコモは値下げの影響で、20年3月期は売上高が4兆5800億円(5.4%減)、営業利益が8300億円(18.1%減)、最終利益が5750億円(13.4%減)と減収減益を見込んでいる。

 同じく値下げに踏み切るにもかかわらず、なぜKDDIは増収増益を予想しているのか。

「すでに利益への影響があった」

 この点について、KDDIの高橋誠社長は「当社は1年半前に(旧ピタットプランとして)分離プランを導入している。ドコモが後から追いかけてきた。当社はこれまでに3000億円強、利益への(マイナスの)影響が出ている。残る1000億円は、今後の3年間で効いてくる」と説明。

 「そのため、値下げによる今期業績への影響はあまり大きくない。影響額は(金融・コマース・エネルギー事業を含む「ライフデザイン領域」の強化などによって)飲み込み、1兆200億円という営業利益を作り上げる」と強調した。

 高橋社長は新プランへの自信もうかがわせ、「当社のピタット・フラットは(業界の)トップバッター。無制限に使えるデータMAXプランは、楽天の参入や5G商用化に合わせてのリリースが予想されていたようだが、なんとか一番に出すことができた」と語った。

分かりづらいとの声も

 ただ、データMAXプラン使用時には特定の条件下で通信速度が制限されるケースがあり、一部の消費者からは分かりづらいという指摘が出ている。

 これに対し、高橋社長は「説明が足りなかった」と認めた上で、「テザリング、データシェア、国際ローミングによる通信量が計20GBを超えた場合は128kbps程度の通信速度になる」と明言した。

 短期間で集中的に通信した際も速度が遅くなるが、対象となるケースは「3日間で6GBの利用が目安だが、それよりも“緩く”する」という。動画サービス利用時なども速度制限がかかるが、「ユーザーに迷惑を掛けないように。HD動画は問題なく見られるようにする」とした。

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