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「アベンジャーズ/エンドゲーム」超ヒット マーベルだけがなぜユニバース化に成功したのか(3/3 ページ)

» 2019年05月21日 15時52分 公開
[西田宗千佳ITmedia]
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次も当たるかは分からず、今後のカギは「ドラマ」か?

 作品がつながり合うという要素は、作品の消費形態が変化したからこそ成り立つものだ。

 劇場はシネコンになって作品の回転が早くなり、劇場公開後はすみやかに映像配信などに流れる。自社傘下のサブスクリプション・ビジネスがあり、何回も見たいファンはそこに集まる。「エンドゲーム」のような作品を作るのは極めて困難なことだが、その結果として、大量の作品の商品価値が高まっているのは間違いない。

 エンドゲームは、5月4日(米国時間)に世界興収21億8869万8638ドルを達成し、「タイタニック」の21億8,746万ドルを超えて歴代第2位となった。公開日からわずか11日間という最速での快挙だ。

 これは、エンドゲームの評価が高いことはもちろんだが、IMAX 3D上映やMX4D上映など、過去になかった「付加価値型上映」の比率が高まったからである。興行収益トップは「アバター」だが、こちらも3D映画の皮切りであり、3D上映館に多くの人が殺到したからでもある。上映単価が上がっていることで、全体の収益が押し上げられている状況なのだ。

 そうした部分も含め、ここからはすぐに「付加価値」が生まれる状況にない。なので、興行収益の話は少し割り引いて考えた方がいいだろう。

 一方で、最大のリスクは、すでに述べたように「連携に失敗した時のリカバリー」である。制作体制にも負担がかかる。

 今回「エンドゲーム」で一つの終わりを迎えたが、ビジネスである以上ふたたび同じ構造を構築していく必要がある。それが成功するかどうかはまだ分からない。

 なんらかの構造を変えないと、同じパターンでは消費者も飽きる、というか「また同じように付き合わねばいけないのか」と思う可能性がある。

 MCUが今後一段落し、「大河ドラマ的構造の映画に顧客を巻き込んだ希有なヒット」という風に、MCUとエンドゲームが位置づけられる可能性もあるだろう。

 個人的には、カギは「ドラマ」ではないか、と思っている。ドラマは映画よりも「物量によるナラティブ」を積み上げやすい構造にある。そして、ヒットすれば長期的なビジネスとなり、リターンも大きい。映画会社のドラマ部門は、どこも成長を続けている。MCUについても、回転と連携の難易度を減らすため、いままで以上に「オリジナルドラマ」へ傾斜していくのではないだろうか。

 日本の場合、「顧客を縛ってどうする。幅広く、入り口のハードルは低く」という意識が映画会社やテレビ局には根強い。そこでMCU的な展開を許すには、長期的な活動を支える柔軟なファンディングこそが必要だ。

 「マーベルスタジオを真似ろ」とはいわないが、低リスクな制作を強いることのないファンディング施策が、日本国内にも必要とされるのではないか。

 そんな風に考えてしまう。

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