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日本の猛暑日、パリ協定の目標を達成しても1.8倍に 気象研究所などがシミュレーション

» 2019年05月24日 07時00分 公開
[ITmedia]

 「われわれが過去にほとんど経験したことないような頻度で猛暑の発生が増加する」。気象庁気象研究所、東京大学大気海洋研究所、国立環境研究所の研究チームは5月23日、昨年7月の記録的な猛暑への地球温暖化の影響と将来の見通しを発表した。

昨年7月は日本列島を2段重ねの高気圧が覆っていた

 昨年7月、日本列島は記録的な猛暑に見舞われた。23日には埼玉県の熊谷市で最高気温41.1度を記録するなど、全国113の地点で観測史上最高気温を塗りかえた。同月の熱中症による死亡者数は1000人を超え、過去最多となっている。

 このような異常気象は観測記録が少ない上、大気が本来持っている「揺らぎ」が偶然重なった結果として発生するため、地球温暖化の影響を科学的に証明することは困難だった。しかしコンピュータの発展により、大量の気候シミュレーションで「揺らぎ」を網羅する手法が可能になったという。

 研究チームは気候モデルを用いて温暖化した状態と温暖化のない状態をそれぞれを計算、比較する「イベント・アトリビューション」と呼ばれる手法で昨年7月の猛暑を分析。その結果、実際の気象条件における猛暑の発生確率は19.9%であったのに対し、温暖化がない気候条件ではほぼ0%だった。これは、「温暖化がなければ昨年7月のような猛暑は起こり得なかったことを意味している」

実際の気象条件(温暖化あり)と温暖化がない場合で見積もった昨年7月の猛暑の発生確率。温暖化なしでは0%だった

 さらに気候データベースに含まれる気象研究所の地域気候モデルを用いた高解像度大規模アンサンブル計算で将来の気候を予測。2015年に採択されたパリ協定で世界共通の長期目標とした「工業化以降(1850年代)の全球平均気温の上昇を2度」に抑えられたとしても、日本の猛暑日は現在の1.8倍に増えると推定している。

 研究チームでは2度上昇に至る時期について、「さまざまな気候モデルがあり、IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)でも特定はしていない。しかし温暖化対策を全く行わない極端なシナリオでは2030〜2050年ごろといわれている」(気象研究所)と説明している。

地球温暖化に伴う年間の延べ猛暑日数(地点数)の変化を推定

【更新:2019年5月24日11時50分更新 ※研究チームのコメントを追記しました】

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