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「リベンジポルノ」にもAI 新技術との正しい距離感は? 各国のAI政策と規制のいまよくわかる人工知能の基礎知識(1/5 ページ)

» 2019年07月18日 07時00分 公開
[小林啓倫ITmedia]

 ビジネスに役立つAIの基礎知識について分かりやすく解説する本連載前回の記事では、AIがもたらすリスクに対して、どのような対策が行われているかを整理した。

 AIを活用する側の自主規制や、AIの振る舞いを可視化する取り組みなどさまざまな対策がある中で、大きな影響力を持つのが各国の政策だ。

 イノベーションは民間主体で進むことも多いが、政府があるテクノロジーに対してどのような態度で臨むかは、その国の社会や経済を少なからず左右することになるだろう。

連載:よくわかる人工知能の基礎知識

いまや毎日のようにAI(人工知能)の話題が飛び交っている。しかし、どれほどの人がAIについて正しく理解し、他人に説明できるほどの知識を持っているだろうか。本連載では「AIとは何か」といった根本的な問いから最新のAI活用事例まで、主にビジネスパーソン向けに“いまさら聞けないAIに関する話”を解説していく。

(編集:ITmedia村上)

 ここで、「赤旗法」(Red Flag Act)という有名な事例を紹介したい。これは自動車が普及を始めた19世紀に英国で施行された法律で、自動車を公道で走らせる際には、文字通り「赤い旗」を持った人間がその前方を歩かなければならないというものだ。

 旗を持った人間が自動車の接近を周囲に知らせることで、交通事故を防いでいた。しかし上限速度が時速3〜6キロに制限されるので、自動車は速く走れない。その結果、英国では自動車産業の立ち上がりが遅れ、ドイツやフランスに先を越されることになったといわれている。

 産業政策の観点からは、この赤旗法は「繰り返してはならない教訓」と位置付けられることが多い。しかし、この法律があることで回避された交通事故もあっただろう。また自動車産業がこれほど栄えるとは、当時の人々は想像していなかったかもしれない。

 いずれにしても、政策はテクノロジーと社会の関係に重大な影響を及ぼす一方で、そこからどのような結果が生まれるのか予測することは難しい。そのため各国の政府が、独自の分析や信念に基づいてそれぞれの政策を進めている。そこで今回は、各国の「AI政策」をまとめてみた。

 本記事では政策の内容を「特定領域での活用支援」「基礎・応用研究の支援」「環境整備」「ガイドライン整備」「具体的な規制」の5つに分類した。前の3つが推進系、残りの2つが規制系の政策だ。

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