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» 2019年07月18日 07時00分 公開

よくわかる人工知能の基礎知識:「リベンジポルノ」にもAI 新技術との正しい距離感は? 各国のAI政策と規制のいま (3/5)

[小林啓倫,ITmedia]

AI研究はどうなる?

 次にAI研究への投資について。研究予算の増額や研究所の新設などは分かりやすい施策のため、多くの国がAI政策の一部にとりこんでいる。

AI戦略の枠組み(「AI戦略2019」より、PDF

 前述のドイツでは、「AI研究開発への投資額を2025年までにGDP比で3.5%に引き上げる」という目標を掲げている。AI国家戦略においても、既存のAI研究開発センターの強化と、12の研究開発センターの新設を発表した。

 フランスは2018年3月のAI戦略の中で、「フランス国立情報学自動制御研究所(INRIA)を中心とした複数の研究機関によるAI研究プログラムを立ち上げる」という方針を打ち出した。

 面白いのは「公的研究機関の研究者が、民間企業で就労できる時間を労働時間の20〜50%に拡大する」とした点だ。単に研究予算や研究拠点を増やすだけでなく、研究の実用化にも前向きだ。

 一方で、基礎・応用研究への支援は、支援の額や規模しか分かりやすい指標がないために「無駄遣いではないか」という批判が生まれがちだ。コストカットの対象にもなりやすい。

 日本の場合はどうか。「AI戦略2019」(リンク先はPDF)で研究開発の中核として位置付けられる理化学研究所革新知能統合研究センター(AIPセンター)の杉山将センター長は、産経新聞のインタビューで、日本のAI研究の課題を次のように指摘している。

 「がんの診断ができるようになったというような、AIを使って何をしたかの成果ばかりが目立っていると感じます。社会の役に立つことは重要ですが、その背景にあるアルゴリズムそのものにしっかり取り組まないといけません。アルゴリズムは難しい数学の論文ばかりが出てくる専門家の世界なので、なかなか世の中に認知されないのが悩ましいところです」

 こうした認知を進めるという点でも、政府にできることがあるだろう。

AIを生かす環境作り

 これまでの連載で解説したように、現在のAIは人間のように自ら「考える」ことはできず、こちらで用意したデータを「学習」させなければいけない。

 したがってAIを賢くさせるためのデータをどう用意するかや、どのようにデータを共有、流通させるかの政策も、AIの普及に大きな影響を及ぼすことになる。

 米トランプ大統領は、2019年2月に「米国AIイニシアチブ」(American AI Initiative)という大統領令に署名した。

 この中では、AI開発におけるデータの重要性が指摘され、米政府が持つ関連リソース(データセットやモデルなど)を開放するという文言が盛り込まれている。

 米国AIイニシアチブについては、新たなAI支援予算が盛り込まれていない、具体的な内容が示されていない、などの批判が出ている。しかし、政府の関連機関が持つ膨大なデータにアクセスしやすくなれば、より革新的なAIアプリケーションが開発されるのではないかという期待もかかる。

 日本も同様だ。前述のAI戦略2019では「データ関連基盤整備」の項目で「AI技術の発展を根本から支えるものは、大量のデータである」とされている。重点5分野におけるデータ連携基盤の本格稼働と、国際相互認証が可能なトラストデータ連携基盤の構築という方針を打ち出しているのだ。

 こうしたデータに関する施策は、AI推進に向けた環境整備を加速させるだろう。環境整備に関する施策はさまざまだが、ここでは人材育成と規制緩和の2つを挙げておきたい。

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