特にひどいと感じたのは、河口に水没していた電動スクーターだ。ベニス・ビーチの河口はウミウシが繁殖しているのが目視できるほど、水質が澄んでいる。それほど水が澄んでいるので、沈んでいるスクーターもひと目で分かる。周りの道には転落防止の柵があるので、転んで落としてしまったとも考えにくい。
道端にまとめて停められた電動自転車・電動スクーターが全てドミノ倒しになっているところもあった。個人所有のものではないので、誰も直そうとしないのかもしれない。
速度も気になった。電動スクーターでも時速30キロ弱は出ているように見えた(後で調べたところ、スペックとしては時速25〜30キロまで出る)。それほどの速度だから当然歩道ではなく車道を走っているのだが、それ以上の速度で運転している自動車から見ればかなり怖い存在ではないだろうか。
スマホとクレカさえあれば乗れてしまう仕組みも、問題がありそうだ。スクーターの機体自身に「要ヘルメット」「18歳以上」「歩道走行禁止」など注意書きはあるものの、乗っている人たちを見るとヘルメットを着用している人が多いようには見えなかった。
米国で電動シェアスクーターが広まったのは、カリフォルニア州サンフランシスコで2018年に導入が始まってからのため、サービスとしてまだ日が浅い。やはり事故は起こっているようで、ロサンゼルスのテレビ局「KTLA」は19年6月、AP通信が報道各社に配信した、電動シェアスクーターブームを報じた記事のタイトルに「死にたがり」(Like a Death Wish)と付けて紹介するなど、電動シェアスクーターの利用に批判的だ。
当該記事の中でAP通信は「(包括的な統計調査はないが)米国では2018年からAP通信が数えただけでも、少なくとも9人が電動シェアスクーター運転時の事故で亡くなっている」という。一方で、「市交通局の全国協会によれば、2018年に米国だけで電動スクーターが3850万回利用された」(同)と、利用にリスクがあるにもかかわらず電動スクーターが米国でブームになっている現状を報じている。
日本でも、クラウドファンディングサイトなどで電動スクーターの取り扱いを見かけることはある。しかし、日本の法律では「原付バイク」の扱いとなるため、運転者の免許携帯はもちろん、前照灯やナンバープレート、バックミラーなど原付と同様の整備が必要になる。米国のようなスタイルで電動スクーターに乗るには私有地で試すしかない。
正直、こうした日本の規制を窮屈に感じることもある。しかし米国の状況を見る限り、安易に日本へ電動スクーターが導入されず良かったように思う。米国で電動スクーターが今後どのように扱われていくのか、しばし見守った方が良さそうだ。
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