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「社長が辞めて大丈夫か」「ヤフーはLOHACOを奪うのか」 アスクル株主総会で質問飛び交う(1/2 ページ)

» 2019年08月02日 16時36分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

 アスクルは8月2日、都内で定時株主総会を開き、取締役10人の選任議案を付議した。筆頭株主のヤフーと第2位株主のプラスが、岩田彰一郎社長と独立社外取締役3人(役職名は当時、以下同)の再任に反対する議決権を事前に行使したため、株主総会の終了をもって4人は退任した。決議に先立って行われた、株主と取締役の質疑では、アスクルの今後について、多くの質問が出た。

 アスクルと対立中のヤフーから出向している社内取締役の輿水宏哲氏、ヤフーが派遣している社外取締役の小澤隆生氏は株主総会に出席し、株主からの質問に応じた。プラス社長でアスクル社外取締役の今泉公二氏は、「所用」との理由で欠席した。

photo アスクルが定時株主総会を開催し、経営陣が株主からの質問に回答した

元セブン&アイ鈴木氏の二の舞に?

 午前10時、岩田社長が「アスクル・ヤフー・プラスの間で、ガバナンス体制や議決権行使、『LOHACO』の譲渡を巡る件でお騒がせしていることをおわびする。本件が、上場子会社におけるガバナンスの在り方、独立社外取締役が果たすべき役割への議論が深まる契機になってほしい」と述べ、株主総会が始まった。

 岩田社長が決算概況を紹介した後に行われた質疑では、同社長の退任による業績への影響についての質問が目立った。

 序盤に挙手した株主は、「セブン&アイ・ホールディングスは、組織を基礎から作り上げた鈴木敏文氏が内紛によって退任してから不祥事が相次ぐようになり、店舗オーナーとのトラブルや、キャッシュレス決済サービス『7pay』の終了といった問題が目立っている。アスクルも、影響力があり、周囲から全幅の信頼を寄せられている岩田社長が辞めて大丈夫なのか。悪い影響があるのではないか」と不安な心境を吐露した。

 これを受け、岩田社長は「アスクルは22年間『お客さまの方を向く』という企業文化を大切にしてきた。これは遺伝子のようなもので、一朝一夕では生まれない。私がいなくなっても会社の風土は変わらない」と語った。若手の後継者候補の育成も進めており、「次の世代を担う人たちは着実にアスクルに育っている」という。

 吉田仁COO(最高執行責任者)は、「(岩田社長の退任後は)法人向け(B2B)事業の円滑な成長を続けることが一番の使命だと思っている。ガバナンスをしっかり効かせ、成長につなげていくことが大切だ」と話した。

ヤフー側の取締役にも質問が

 中盤には、株主から「現体制では、LOHACOの立て直しに向け、ナショナルブランドだけではなく、プライベートブランドを強化する方針を掲げているが、ヤフーはLOHACO事業の新しいプランを持っているのか」と、ヤフー側の取締役への質問も飛んだ。

 これに対し、小澤取締役は「ヤフーのプランを押し付けることは、アスクルの独立性の侵害につながるので、アスクルの立て直し策をバックアップしたい」と回答した。

 ただ、今後の体制については「あらゆるリスクを考慮に入れながら業務を執行し、予想だにしないことが起きても乗り越え、適切な処理をして、掲げた目標を達成できる執行体制にしていきたい」(小澤取締役)と述べ、物流センターの火災や配送費の高騰を減益要因に挙げていた旧体制を暗に批判した。

LOHACOをアスクルから分離するのか

 この他、「ヤフーは今後、LOHACOをアスクルから分離する可能性があるのか、イエスかノーで答えてほしい」との質問に対し、輿水取締役は「アスクル内で審議をして譲渡をしないといったん決めたので、今のところは考えない」と回答。

 これを受けた岩田社長が「『いったん』とはどういう意味か」と問いただし、輿水取締役が「譲渡はしない」と言い直すなど、緊迫した空気が漂う場面もあった。

 一方、小澤取締役は「ノー」と即答し「LOHACOをヤフーに持ってくることはないので、安心してほしい」と説いた。

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