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「ヤフーからの重圧は感じない」「岩田前社長からDNA受け継ぐ」 アスクルの吉岡新社長が強気の姿勢(1/2 ページ)

» 2019年08月03日 02時00分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

 アスクルは8月2日、社長を退任した岩田彰一郎氏の後任として、吉岡晃COO(最高執行責任者)が社長兼CEO(最高経営責任者)に昇格したと発表した。吉岡新社長は「(ヤフーという)支配株主が存在する中で、アスクルの上場子会社としての独立性を保ち、少数株主の利益を保護できるガバナンス体制を確立したいという思いは(岩田前社長と)変わらない」と説明。ヤフーと共同運営するECサイト「LOHACO」事業の業績改善にも取り組む姿勢を示した。

「ヤフーからのプレッシャーは感じない」「岩田前社長からDNA受け継ぐ」

 アスクルが同日開いた株主総会では、LOHACO事業の不振などを理由に、筆頭株主のヤフーと第2位株主のプラスが岩田前社長と3人の前独立社外取締役の再任に反対する議決権を行使。4人は退任を余儀なくされた。

 岩田前社長は、退任後の記者会見で「新経営陣は大株主(ヤフー)からのプレッシャーや恐怖と戦わなければならない」と語っていた。これを受け、報道陣から決意のほどを問われた吉岡新社長は、「特にプレッシャーは感じていない」と断言した。

 吉岡新社長は、岩田前社長への尊敬の念は変わっていないとし、「岩田とは長い間一緒にやってきた間柄。アスクルのDNAというものは岩田がいなくなっても生きている。しっかりと受け継いでいきたい」と真剣な面持ちで語った。

photo アスクルの吉岡晃新社長(=中央)

資本関係を解消したいという姿勢は変わらず

 新体制では、吉岡新社長がこれまで務めていたB2C事業の責任者を木村美代子CMO(最高マーケティング責任者)が兼任する。B2B事業の責任者は、引き続き吉田仁COOが担当。ヤフーから出向している社内取締役の輿水宏哲氏、ヤフーが派遣している社外取締役の小澤隆生氏、プラス社長でアスクル社外取締役の今泉公二氏は、取締役を続投する。

 アスクルを創業し、20年超にわたってトップを務めた岩田前社長が退任に追い込まれたが、アスクルは引き続きヤフーの子会社であり、新経営陣はヤフー側の社外取締役の影響下にある。

 こうした状況に対し、吉岡新社長は「ヤフーとの資本関係を解消したいという基本姿勢は変わっていない」と説明。「だが、拙速な判断を下すことなく(一定の時間をかけて)最適解を見つけたい。自社株式の売渡請求権も放棄せず、今後もヤフーの動向を注視していく」とした。

photo アスクルの吉岡晃新社長のプロフィール(=IR資料より)

LOHACO立て直しなどを推進

 吉岡新社長は、就任後すぐに着手する点として(1)ヤフーとのコミュニケーションの改善、(2)LOHACO事業の立て直し策の遂行、(3)新たな独立社外取締役の選任――の3点を挙げる。

 ヤフーとのコミュニケーションに関しては、資本関係の継続・解消について話し合う場合も、LOCACO事業の立て直し策について話し合う場合も、「(取締役会などの)オフィシャルな場で健全な意見交換ができるようにしたい」という。

 アスクルは開示資料の中で、過去にヤフーの川邊健太郎社長が弁護士を伴って来社し、岩田前社長に退陣を求めたことがあったと明かしていた。そのように交渉が秘密裏に進むケースを避けたい考えだ。

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