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AIベンチャーは「ヤフー知恵袋」じゃない タダ働きからの卒業宣言マスクド・アナライズのAIベンチャー場外乱闘!(2/5 ページ)

» 2019年08月06日 07時00分 公開

 私も分析ツールの検討という名目で呼び出された結果、「Excel方眼紙の売上金額を集計したい」「メールの内容を判断して担当者別に振り分けたい」と相談されたことがあります。

 これらはExcelやメールソフトの標準機能で解決できますし、ユーザー企業はどんな問題もデータ分析ツールを導入すれば解決できると誤解している節もあります。事前に把握できればわざわざ訪問しませんが、相手も「電話では説明できない」「対面じゃないと伝わらない」などの理由で呼びつけてきます。時間と労力と交通費の使い方を見ても、発注側と受注側の力関係が分かってくるものです。

 機能や要望をまとめたチェックシートを基に検討しようにも、単純に○×で埋めればいいわけではありません。現状の業務に必要な機能や要望を全てリストアップしても、完全にフィットする製品は存在しません。

 既存業務と分析ツールのギャップを埋めなければ採用すべきか判断できませんし、こだわれば自社向けに一から開発するしか方法はありません。延々と検討を続けても、いずれ一時凍結という名目で検討中止になるのです。

 時間と手間をかけても検討中止という「結果」だけが残るのは、スタンド使いが「キング・クリムゾン」を発動させたとしか思えません。

分析ツール検討の“よくある”パターン

 どこからか「分からないから聞いている」「お客さまへの提案力こそIT企業の本質である」という声が聞こえる気がしますが、行き過ぎた支援は弊害を生みます。

 これだけユーザー企業に滅私奉公しても、ベンダーは受注しなければ1円の売上にもなりません。若手芸人が営業でネタをやれば250円振り込まれますが、データ分析ツールの社員が営業でデモをしても1円も振り込まれないのです。

 資金に余裕のないベンチャーなら、長期間提案を進めた案件が見送りになるのは、かなりの痛手です。それでも「提案活動」「比較検討の支援」「信頼関係の構築」という、実質タダ働きプランは思った以上に蔓延しています。

 余談ですが、私宛に企業の方から「弊社のために指定する内容で記事を書いて下さい。なお、報酬はありません」という依頼が来ます。導入側の立場になると、他人をタダ働きをさせることに違和感を抱かなくなるのかもしれません。

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