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ソフトバンクG孫社長、投資戦略の過去と未来を語る 「Sprintは悪くなかった」「Vision Fund第2弾を3カ月以内に始める」

» 2019年08月07日 20時11分 公開
[片渕陽平ITmedia]

 米国司法省が7月下旬に、ソフトバンクグループ(SBG)傘下で米通信キャリア4位のSprintと、3位のT-Mobileの合併を承認した件について、SBGの孫正義社長(兼会長)は8月7日の決算会見で「長年、懸案だったSprint問題に決着がつきそうだ」と安堵の表情を見せた。両社は2019年内にも合併する見通しで、SprintはSBGの連結から外れる。13年の買収後、Sprintは業績悪化が続き“SBGのお荷物”との見方もあったが、孫社長は「投資のリターンは悪くなかった」と振り返った。今後は「SoftBank Vision Fund」(SVF)の第2弾を2〜3カ月以内に立ち上げ、AI領域への投資を加速させるという。

photo ソフトバンクグループの孫正義社長(兼会長)=ライブ配信より

Sprintへの投資で「1億円の評価益」

 孫社長は「Sprintの買収金額はおよそ2.1兆円。そのうち、借入ではなくSBGの資本(株主価値)で賄った部分は0.4兆円。合併後、SBGはSprintの株式の27%を保有することになり、借入金を差し引けば、株主価値は1.3兆円ほどになる」と説明。「Sprintへの投資は大失敗と評価している人がほとんどだろう。ある面では正しいが、3倍の価値を生み出したともいえる」と述べた。

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 8月6日現在、SBGの有利子負債は17兆円で、そのうちSprintが5兆円を占める。Sprintが連結から外れると、実質の負債は12兆円に減る計算だ。さらに孫社長は「通信子会社のソフトバンク(SBKK)は独立採算で、自ら返済可能な範囲でしか借り入れていないため、(負債額は)実質7.4兆円。SBGは2.5兆円の現預金があるので、返済すべき純負債は5兆円ほどだ」と説明。「SBGの保有株式の2割を売れば、借入金をゼロにできるレベルだ」とし、「借入金が多い」というイメージはないと強調した。

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 SprintとT-Mobileが合併すれば、米国市場でトップのVerizon、2位のAT&Tに迫るポジションになる。SBGは、Sprintを連結から外すことで負債額を抑えられるだけでなく、合併後にSprintとT-MobileのスマホユーザーをSBGが出資するUberなどに送客する――といったメリットも考えられる。「グループカンパニーとシナジーが生まれる可能性はかなりある」という。

「これからのSBGのエンジンをふかすのは、AIへの投資」

 一方、孫社長は「(Sprintなど)過去に投資した通信・インターネット企業からのリターンはあるが、これからのSBGのエンジンをふかすのは、AIへの投資だ」とし、これまでSVFが「群戦略」のもとで積極的に投資してきた、AI関連のユニコーン企業への期待をうかがわせた。

 第2のSVFも近く立ち上げる計画を進めており、「来月、再来月には投資を始める。SBGが自ら出資する4兆円を含め、投資規模は11.7兆円になる」(孫社長)という。

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 第2のSVFは、米Microsoftや米Appleなどが出資者として参加する見通しだが、「それ以外(の企業)とも話し合いを進めており、金額はさらに増える可能性がある」としている。孫社長は「後ろを振り向かず、前進あるのみだ」と、AIへの投資を加速させていくことを宣言した。

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