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» 2019年08月09日 07時00分 公開

伊豆諸島航海日誌(2):「ネットが消えた島」の住民が不安に思っていること (1/3)

大型連休中に伊豆諸島で起きた通信障害について、島の住民たちに当時の状況を聞いた。

[長浜和也,ITmedia]

 東京・伊豆諸島の新島、式根島、神津島、御蔵島で、2019年4月下旬から5月初めにかけて、光回線を使った電話やインターネットの通信に障害が発生した。神津島や式根島などの観光協会が公式サイトで「『通信災害』といってもいい状態」と表現したように、地元住民と島の産業、観光客に大きな影響を及ぼした。

 従来のマイクロ波とADSL回線の組み合わせから、海底光ケーブルを利用した光回線に移行していた事業所と個人は、ネットだけでなく電話やFAXなども利用できなくなった。

 筆者は7月下旬に伊豆諸島へ渡り、インターネットが使えなくなった世界で何が起こっていたのかを住民に取材した(関連記事)。

 この現地取材で話を聞いた多くの人(特に大人)は、口をそろえて「商売をするのが大変だった」と話していた。そこで、新島で「民宿 吉田屋」を営む前田桂さん、自動車整備工場「小久保自動車」代表取締役の小久保雅章さん、新島村商工会で経営指導員として活動する西胤(にしつぐ)輝之進さんに当時の状況を聞いた。

今回話を伺った、前田さん(左)、小久保さん(中央)、西胤さん(右)

観光業に限らず大打撃

 当時の報道では、民宿や、マリン用品、レンタル自転車、バイクなどを扱う店舗など観光業への影響が大きく取り上げられた。

 実際、現地取材でも「(民宿じゃない)うちの店は注文ができないだけで済んだけれど、民宿の人たちはとても大変だったみたい」と多くの人が気の毒そうに話していた。ネットもそうだが、電話が使えなかったことで大きなダメージを受けたという。

 しかし、観光業以外でも電話やネットが使えないことの影響は計り知れないものがあったと、小久保さんと西胤さんは話す。

 商工会スタッフとして島内事業所の相談を受けていた西胤さんによると、電話とFAXが使えなくなったことで、連休前の仕入れの発注ができなくなった事業者が数多くあったという。

 小久保さんが営む自動車整備会社では、車検に伴う自賠責保険の申し込みをオンライン化し、決済はインターネットバンキングに対応していた。高度な整備業務で必須になる技術資料は、自動車整備振興会が用意したサーバにアクセスして閲覧する仕様だ。そのため、整備業務がほぼ全面的にストップしてしまったと振り返っている。

 前田さんの民宿は、幸い電話回線を従来のままにしていたので、予約の電話やFAXを受けることができた。しかし、ネットワークによる決済や通販が利用できない。客室用の消耗品や食材など、大型連休で大量に必要になる物資を島内だけで調達するのに大変苦労したと語った。

 他の民宿も、予約者が本当に来るのかどうか分からず困るケースが多かったという。旅行代理店と提携している民宿は、予約情報をFAXでやり取りしていたため、前田さんの民宿でFAX受信を代行することもあったそうだ。

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