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» 2019年08月16日 17時01分 公開

「メジャーストリーマー移籍」がもたらす衝撃 ゲーム配信者がヒットを生み出す時代 (1/2)

大型移籍が話題になるのはメジャーリーグばかりではない。メジャーストリーマー、つまり有名な動画配信者が本拠地を変えたことが大きな話題となっている。

[西田宗千佳,ITmedia]

 8月1日、アメリカで活躍するストリーマー(日本ではYouTuberの方が通りがいいが、ストリーマーの方がプラットフォーム依存のない言葉なので、こちらを使うべきだと思っている)の「Ninja」ことタイラー・ブレヴィンスさんが、ストリーミングに使うサービスをAmazonのTwitchから、MicrosoftのMixerへ変えると発表した。

photo MixerのNinjaページ

 このことは、アメリカのゲームシーンではかなり大きく報じられている。

 NinjaはTwiterのフォロワーが462万人を超える、「超」がつくほどの人気者だ。そんな人物が、自身の収益の源である配信サービスを切り替えるのは、確かに大きなニュースだ。Amazon傘下のTwitchからMicrosoft傘下のMixerへ、というのも話題性がある。

photo Twitchのページも残っている

 世界のゲームシーンを知らない人からみれば、「ふーん」という感じのニュースではないか。実際、そんなところだろうと思う。

 だが、こうした大きな移籍劇がなぜ起きるのか、そもそも彼のようなストリーマーがなぜ大きなビジネスになっているのか、そしてゲームなどの市場にどのような影響を与えているかを知ることは、「映像とビジネスの関係」の変化を示す、とても良いサンプルなのではないか、と思うのだ。

 そこで今回は、「ゲームのことを知らない人」に向けて、「Ninja移籍がビッグニュースになり得る背景」を解説してみたい。

この記事について

この記事は、毎週月曜日に配信されているメールマガジン『小寺・西田の「マンデーランチビュッフェ」』から、一部を転載したものです。今回の記事は2019年8月5日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額648円・税込)の申し込みはこちらから

世界トップ級の「ゲーム配信者」がサービスを移籍

 まず、Ninjaがどのくらい稼いでいるのか、そこを知るところから始めよう。

 先ほど確認したところ、彼のTwitchでのフォロワーは1471.6万人(!)いる。これだけの人間が定期的に彼のゲームプレイ動画を見ているわけだ。

 また、2018年の記事によれば、彼には16万人の「スポンサー」がいる。Twitchにおけるスポンサーとは、いわゆる有料の会員登録であり、Twitch側に毎月一定額を支払うと、その一部が運営を通じて登録したクリエイターにも支払われる。まさに、そのクリエイターの「スポンサーになる」制度である。スポンサー登録した場合、運営側からは毎月、登録者1人当たり数ドルが支払われる。これだけで、彼は毎月数百万ドル単位のお金を手にしている計算だ。

 そして、1470万人を超えるフォロワーを得ているということは、それだけメディアとしての価値がある、ということでもある。レッドブルと広告スポンサー契約をしており、相応の契約料が支払われている、と考えていいだろう。アフィリエイトなども配信に組み込めるし、いわゆる「投げ銭」機能もある。これだけ注目を集めていれば、マネタイズの方法には事欠かない。

 要は、彼はゲームを軸にしたストリーマーとして、世界トップクラスの注目を集める人間であり、相応の市場を築いていた、ということなのだ。

 現在、ゲームのストリーミング配信については、世界的にはTwitchのシェアが大きい。ユーザーによるストリーミング配信全般でいえばYouTubeが圧倒的なシェアを持つが、ゲームに関して言えばTwitchが多い。日本とはかなり状況が異なる。ゲームに特化した形なのでユーザー層が読みやすく、ことゲームや関連分野の商品については広告価値も高い。

 Microsoftはこうした状況を追いかけるために、2017年、それまで展開していた「Beam」という配信サービスを名称変更、「Mixer」とし、より積極的なビジネス展開を行っている。

 TwitchのトップストリーマーだったNinjaが活躍の場をTwitchからMixerに移すというのは、当然大きな決断である。移籍条件などは明らかになっていないが、金額面も含め、相応の利点が彼にあった、と考えるのが自然だ。少なくとも、これまでNinjaとTwitchの関係が悪い、という話は出てきたことながく、Mixer側の条件がかなり良かった、と考えていいのではないか。

 Microsoftは、それだけの人物を移籍させられるだけの経営リソースをMixerに投じていると考えられるわけで、このジャンルでの競争激化を示すニュースでもあるのだ。

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