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AI-OCR、医療、監視――広がる画像認識の可能性よくわかる人工知能の基礎知識(3/6 ページ)

» 2019年08月21日 07時00分 公開
[小林啓倫ITmedia]

 「文字の読み取りなどという地味な作業がAI?」と思われただろうか。しかし私たち人間が何気なく行っていることでも、機械にとっては非常に困難なタスクであるケースはよくある。文字の読み取りもその一つで、それをAIに任せるのは従来の業務を一新するほどのインパクトがある。

 例えば損保ジャパン日本興亜は、2017年7月に「カシャらく見積り」というアプリを発表した。これはタブレット端末のカメラで他社の自動車保険証券を撮影すると、その中の文字を認識して諸条件や現在の補償内容を把握し、損保ジャパンの保険商品に置き換えて短時間で見積りを作成してくれるというものだ。この文字の把握に、ディープラーニングを活用した画像認識AIが使われている。

「カシャらく見積り」

 このアプリは、自動車ディーラーなど代理店が保険販売を行う際に活用することを想定している。自動車ディーラーはクルマを売るのがゴールなので、長い商談を行った後で、さらに保険販売に時間をかけるモチベーションがわきにくい。

 しかしAIで瞬時に現状の保険内容を把握し、新たな保険を提案できるのであれば、損保ジャパンの保険を売ってもらえる可能性が高まる。実際にこのアプリを使うことで、従来30分ほどかかっていた見積りの作成が1分に短縮されたという。

 前述のMM総研のアンケートでも、AI-OCRの効果として、導入企業の85.7%が「データ作成に要する時間を削減できた」と回答。私たちの仕事の中には、「紙で情報をやり取りする」という場面が意外と多く残っている。AI-OCRはAIとしては「地味」なアプリケーションかもしれないが、使い方次第で、これまでにないメリットを生み出すことが期待できる。

専門家の目を手に入れるAI

 「写真に映っているのは猫か犬か」「この書類には何と書かれているか」というのは、これまで機械には難しい問いだった。AI技術の進歩によってその状況が打ち破られたわけだが、ひとたびハードルをクリアすると、機械は一般的な人間よりも優れた「目」を持つようになる。その象徴的な例が、画像認識の医療分野への応用だ。

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