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AI-OCR、医療、監視――広がる画像認識の可能性よくわかる人工知能の基礎知識(5/6 ページ)

» 2019年08月21日 07時00分 公開
[小林啓倫ITmedia]

「ビッグブラザー」としての画像認識技術

 一方で疲れを知らず、何千、何万という画像や映像を同時に解析できるAIは、社会を監視する目になるのではないかという懸念もある。言うまでもなく、防犯カメラとAIの融合に関する話だ。

 防犯カメラ、あるいは監視カメラはもちろん昔からあった技術だが(日本でもOCR同様、1960年代から登場していたそうだ)、レントゲン写真などと同様に、撮影された映像を誰かが「見る」必要がある。

 誰も見ていない、もしくは撮影すらしていないダミーのカメラを置くだけでも防犯効果があるといわれているが、映像から何らかの犯罪の犯人を特定したり、犯行を未然に防いだりするためには、人間のチェックが必要だった。AIによる高度な画像認識があれば、膨大な数のカメラ映像を長時間チェックしなくても、特定の人物を瞬時に割り出せる。

 事前にその人物の顔に関するデータを与えておけば、あとは機械がそれと一致する人物が映っているかどうか、リアルタイムで画像を解析するのだ。そのため防犯カメラとAIが連携すれば、24時間365日一時も休まず監視を続ける機械が生まれることになる。

 それを実現したといわれているのが中国だ。報道によれば、中国では2億台近い防犯カメラが街角に設置されており、そのうち1割のおよそ2000万台がネットワークに接続され、映像がリアルタイムで解析されているという。「天網」と呼ばれる監視カメラネットワークだ。

 中国政府はこの天網を、2020年までに中国全土に導入することを目指している。具体的な成果も生まれており、中国の有名歌手ジャッキー・チュン(張学友)のコンサートに押し掛けた大勢の観客の中から、複数の指名手配犯を発見・逮捕することに役立てられたという報道もある。

 軽犯罪の摘発にも活用されている。例えば歩行者が決められた場所以外で道路を横断(ジェイウォーキング)していないかをチェックし、後日罰金などを課す場合もあるそうだ。欧米の人権団体や政府機関は、この監視ネットワークが中国国内の少数民族の弾圧に使われていると非難している。

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