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AI-OCR、医療、監視――広がる画像認識の可能性よくわかる人工知能の基礎知識(6/6 ページ)

» 2019年08月21日 07時00分 公開
[小林啓倫ITmedia]
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 海外からの懸念をよそに、中国政府はAIを使った監視技術を他国に輸出し、既にその数は18カ国に達するという調査結果もある。ジョージ・オーウェルが著書「1984年」の中で生み出した「ビッグブラザー」という概念は、監視社会をやゆする言葉として使われてきた。今は実体を持つビッグブラザーが画像認識技術によって生まれ、世界に広がろうとしている。

 こうしたAIによる映像を通じた監視は、特定の人物を把握するだけでなく、何らかの犯罪行為(万引きやテロなど)を摘発するレベルにまで達している。例えば周囲をキョロキョロ見回すといった万引き犯が取りがちな行動を機械が認識するよう準備し、それを小売店内に設置された防犯カメラと組み合わせることで、怪しい行動をリアルタイムで把握できる。

 こうした技術が実用化しても、すぐに私たちの生活に悪影響が生まれるわけではない。来年に迫った東京オリンピックでも、さまざまなAIによる画像認識技術が活用され、防犯を始めとした多くのメリットが生まれると期待されている。

 しかしそれはもろ刃の剣であり、同じ技術でも使い方によっては、人々にとってマイナスになる恐れがあることを意識する必要がある。その他のAIアプリケーションについても、それがどのようなメリット・デメリットをもたらし得るのか、私たち全員が考える必要があることを、画像認識の分野は教えてくれるのではないだろうか。

著者プロフィール:小林啓倫(こばやし あきひと)

経営コンサルタント。1973年東京都生まれ、獨協大学外国語学部卒、筑波大学大学院地域研究研究科修士課程修了。システムエンジニアとしてキャリアを積んだ後、米Babson CollegeにてMBAを取得。その後外資系コンサルティングファーム、国内ベンチャー企業などで活動。著書に『FinTechが変える! 金融×テクノロジーが生み出す新たなビジネス』(朝日新聞出版)、『IoTビジネスモデル革命』(朝日新聞出版)、訳書に『テトリス・エフェクト 世界を惑わせたゲーム』(ダン・アッカーマン著、白揚社)、『シンギュラリティ大学が教える 飛躍する方法』(サリム・イスマイル著、日経BP社)など多数。


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