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「ポケGO」で送客、Nianticの位置情報マーケティング戦略

» 2019年08月27日 22時25分 公開
[芹澤隆徳ITmedia]

 「Ingress」に「Pokemon GO」「ハリー・ポッター:魔法同盟」など、位置情報とAR(拡張現実)を組み合わせたスマートフォンゲームで知られる米Niantic。位置情報ゲームは他社にもあるが、その特性を生かしたマーケティング戦略は他社に見られないものだ。スポンサー戦略について聞いた。

Nianticの白石淳二氏(ストラテジックパートナーデベロップメント担当マネージャー)

 現在、Niantic東京オフィスが担当する日本、韓国、台湾では、「パートナー」と呼ばれるスポンサーがIngressで3社、ポケモンGOで14社、ハリー・ポッター:魔法同盟で1社ある。ゲーム内には7万カ所に及ぶスポンサー由来のPOI(Point of Interest:ここではジムやポケストップを指す)が存在する。

日本、韓国、台湾のパートナー

 Nianticの白石淳二氏(ストラテジックパートナーデベロップメント担当マネージャー)は、売上などの数字には触れなかったものの、パートナー事業がビジネスの柱の1つになっているという。「Nianticがスポンサーに提供するのは、大きく分けて認知拡大と送客の2つ。例えばスポンサーのジムやポケストップを開くとフォトディスクと呼ばれる部分に企業や店舗、サービスのロゴが表示されますが、これはメディアに露出するようなイメージです」(白石氏)。

 注目度の高いゲームだけに、副次的な効果も期待できる。「台湾ではセブン-イレブン(現地法人)が初めてのパートナーになり、現地メディアに大きく取り上げられました。積極的に(他の地域へ)進出したい企業にとって、ポケモンGOは相性が良いサービスです」(白石氏)。

 送客の仕組みは、現実の位置情報を活用するポケモンGOならでは。「現実の世界には多数の競合店舗がありますが、ゲームの中にはパートナーの店舗しかありません。トレーナー(プレイヤー)は、アイテムの入手やポケモンバトルのために遠回りしてでもスポンサーのPOIを訪れます」(白石氏)。最近ではスポンサーのポケストップでしか手に入らない「フィールドタスク」(報酬ありクエスト機能)を設けたり、リアル店舗で使えるクーポンコードをゲーム画面に表示したりするなど、より積極的にPOIを活用している。

ゲーム(バーチャル)にとどまらず、店舗(リアル)も含めてパートナー、プレイヤーともに利益を生み出す仕組みだという

集まり過ぎる弊害と期待の新要素

 多数のトレーナーが協力して強大なボスポケモンを倒す「レイドバトル」は、最も効果の高い送客手段だ。例えばイオンは今年1月、期間限定で毎日同じ時間帯に伝説ポケモンのレイドバトルを行うキャンペーンを実施。各地のショッピングモールに大勢のトレーナーが詰めかけた。

埼玉県のイオン系巨大ショッピングモール「越谷レイクタウン」の様子。現実世界では広い通路に人があふれた

 一方、レイドバトルに関しては「街中のジムに人が集まり過ぎる」といった指摘もある。「店舗側の要請でジムをポケストップに変更するなどの対策を行うこともあります。ただ、最近はジムに適さない場所などの知見がたまり、そうした場所は最初からポケストップにするようアドバイスしています。以前に比べると、(変更の要請などの状況は)落ち着いてきました」(白石氏)。

 今年の夏、ポケモンGOには原作ゲームやアニメでなじみ深い「ロケット団」という新要素が加えられた。戦う場所はジムからポケストップに移り、出現時間はレイドに比べると短い。ソロプレイが前提ということもあり、今のところ人が集まり過ぎるなどの弊害は報告されていないという。

「ロケット団」がポケストップを占拠

 レイドに比べると1回の送客効果は薄いものの、多くの場所で頻繁に出現するロケット団。今後、Nianticのパートナー戦略において、強力な武器になるのかもしれない。

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