映画やドラマ、アニメーションなどの映像作品には、とても効果的なフォント使いでデザインも優れたものがある。今回は過去の名作から現代に至るまでの作品を紹介しながら、どんな意味と意義があるのかを考えてみたい。興味をもって世界を眺めてみれば、フォントや書体はもっと豊かな意味づけをすることができる。みなさんのフォント・デザイン探索に役立つ書籍も数冊紹介する。
1978年にリバイバル上映された「2001年宇宙の旅」の初体験から、かなりの歳月を過ごしてようやく気がついたことがある。それは、この映画がデザイナーとしての自分の人生に大きく影響を与えており、それはフォントの使い方にあるということだ。
※映画「2001年宇宙の旅」(1968年公開)のストーリーに関する記述が出てきます
スマートフォンやSNSの普及で、誰もが気軽に情報を発信できるようになった今、「どう発信するか」を考える上で、欠かせないのがフォントやデザインです。「最近ここのフォント変わったな」「このロゴどうやってデザインしたんだろう」と、身近な文字が気になっている人も多いのではないでしょうか。
この連載では、街角やビジネスの現場など身のまわりにある文字をきっかけに、奥深いフォントとデザインの世界をご案内します。いつも使っているスマートフォンやデジタルカメラを片手に、ひとときの「フォントの旅」を楽しんでみませんか。
1980年代末からパーソナルコンピュータをデザインワークに取り入れ、1990年代〜現在までグラフィック、エディトリアルデザインの分野でフォントの適切な使い方にこだわったデザインワークを続ける。「ITmedia NEWS」のロゴの「ITmedia」部分のデザインも担当している。
映画中で宇宙ステーションや機器類のセットで使用されているフォントはUnivers(ユニバース)が多用されている。フロイド博士と保安部のミラーが入場ゲートを通過するシーンでは、ゲートナンバーの数字書体にUnivers Extra Blackが、ディスカバリー号の船内でHAL9000コンピュータが反乱を起こして、コールドスリープ用の生命維持装置をダウンさせてしまったときの警告画面には、Univers Bold Condencedが使用されているのが確認できる。
私の強烈なUnivers好みは、このときから時間をかけて醸成されてきたようである。デザインのフォーマットを定義するときに、この書体は常によき「相棒」であり、Lynotype UniversやUnivers Nextには惜しげもなくライセンス料金を支払ってきた。そして投資額以上の利益をデザインでもたらしてくれたのだ。
少々おおげさなイントロになってしまったが、みなさんも「自分の好みにぴったり合致したフォント」は気持ちも上がるし、受け手として目にしていても気持ち良いはずだ。
ここでは夏休みの宿題提出気分で、「2001年宇宙の旅」で使われた上記のシーンをBlu-rayで視聴しながらフォントを組んで再現してみよう。
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