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「ヤベェ本」2万RTで異例の重版、「有職装束大全」が絵師のハートをつかんだ理由(5/6 ページ)

» 2019年10月21日 07時00分 公開
[長浜和也ITmedia]

清田さん これまでも参考になるような情報をSNSに投稿すると、創作者の皆さんは強く反応していました。例えば「ゲイ短編小説集」(1999年12月出版)などは、SNSの反応がきっかけで重版になっています。

 営業の仕事は、その本を求めている人に届けることです。有職装束大全は、書店では茶道や着物の棚に並ぶのですが、コミック作者向けに販売したいと思えば、作画資料の棚に並べてもらうようにお願いしたりします。創作する人はその世界観をどれだけ細かく正確に描くかを大切にされるので、そのために有職装束大全を使ってもらえればと。

竹内さん 編集部としては、同人作家などの個人に対する需要については、まだ追い付けていないというのが正直なところかもしれません。ですので、robinさんのツイートが2万リツイートされたのがまず驚きですし、それが一瞬のうちに出た数字というのにも驚きました。これまで編集部でSNSを使うことは少なかったですが、今回の件でだいぶ意識は変わりました。若い編集者は個人的にSNSを利用して企画のための情報を収集したりしています。

清田さん 平凡社の本で、これほど多くのリツイートがあったのは初めてのことです。それほどまでに話題になっていることを把握できたことに加えて、ネット書店を始めとした書店さんからの問い合わせや注文が数多く来たことから確信を深め、いつもより多めに重版しました。

竹内さん 営業部がこんなに早く動いたのは初めてのことかもしれません。

──書店の在庫がなかったり、図書館も貸し出し中の所が多いです。特にAmazonなどネット書店の反響がいつもより大きかったと聞いていますが。

清田さん 通常、ネット書店にはあまり在庫を置かないのですが、今回はネット書店からの注文がリアルの書店と比べて圧倒的に多かったです。Twitterで話題になるとネット書店の問い合わせが多くなるという傾向は、前からありました。特に創作者層に響くと皆さんネット書店から購入されます。一方で、ネット書店での反響をリアル書店にも拡大していくことが重要になります。

──これほど多くの人が有職装束大全に関心を持った理由について、どう分析されていますか。

八條さん 個人の創作者の皆さんや平安時代の文化を好む人たちに関心を持ってもらえるというのは、最初から予想していました。ですから、知ってもらえれば買ってもらえるだろうと。今回、影響力のある方にSNSで言及してもらったことで、多くの創作者や平安文化を好む人に知ってもらうことができたと考えています。

平安時代の楽しみ方と「即位の礼」

──平安時代の文化と一口にいっても幅があります。なぜ装束に着目されたのでしょうか。

八條さん 衣食住は多くの人が興味を持つものです。例えば、平安時代の食文化をまとめた本を作っても、多くの人が関心を持つでしょう。加えて、文学の理解には衣食住の理解が欠かせません。紫式部は「源氏物語」を現代小説として書いていましたが、現代になって私たちが当時の衣食住の知識なしに読んでもその内容を理解できないのです。特に紫式部などが活躍した平安中期から後期(西暦900年から1000年前後)は、奈良時代からの唐文化の影響と日本人の感性が合致した平安文化がピークを迎えます。平和が続き、女性が文化の面で台頭した世界でも珍しい時期でもありました。

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