竹内さん 編集部は、そのような個人の需要を把握していませんでした。しかし、有職装束大全は平凡社が重視しているリファレンス書籍として非常にいい仕上がりになったという自信はありましたね。ただ、価格が高いので、個人の購入は相当な専門知識を必要とする人に限られるのではないかと考えていました。
八條さん robinさんのツイートで、有職装束大全の巻末に載せた資料集を「えぐい(誉めている)」と紹介しているのを見て、「あぁ、分かってらっしゃる」と思いましたね。あの原文を記載しているかいないかで、有職装束大全の価値はだいぶ違ってきます(注3)。
注3:通常、リファレンス文献の最後には参考文献のリストを掲載する。しかし、有職装束大全の巻末には参考文献のタイトルのみならず、装束関係の内容を記述した原文の一部も記載している
──なぜ、元資料の原文を収録しようと思ったのですか。
八條さん 理由は2つあります。1つは、参考文献リストでタイトルと記載場所を書いたとしても、原書が入手できなければ調べようがないからです。なので、本書に参考資料の原文を収録すれば、資料としての価値が一気に高まります。有職装束大全は、アニメイラストを模写する中学生から研究者まで広く使える資料にしたかったのです。そうなると、原文を収録する必要がありました。
2つ目は、「著者の言いっぱなし」にしたくなかったからです。原文を収録することで、読者が本書の信ぴょう性を検証できるようにしたかった。また、自分が知っている知識だけで真偽を判断する人も少なからずいますが、そのような方も原文に当たった上で真偽を判断できるようになります。
竹内さん 編集部としては、通常通り参考資料のタイトルと記載場所のリストでいいと考えていました。原文まで収録するケースは今まで見たことがありません。
八條さん 私のほうで押し切りましたね。本当はあの十倍の内容を収録したいと考えていました。自分でも20年以上かけて装束に関する文献を独自にデジタルデータ化してまとめています。
──平凡社として、今回の件で新しい知見を得ることはできましたか。
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