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「ヤベェ本」2万RTで異例の重版、「有職装束大全」が絵師のハートをつかんだ理由(2/6 ページ)

» 2019年10月21日 07時00分 公開
[長浜和也ITmedia]

八條忠基さん(以下八條さん) あれよあれよという間に重版が決まりました。表向きには「特殊な本なので重版に驚きました」と言っていますが、実をいうと私はそれほど特殊な本だと思っておらず、2年以内には重版するだろうという自信がありました。14年前に出した本(注1)も最終的に5刷りまで版を重ねています。需要はあるわけです。ただ、その販売先は個人というより図書館になります。中学校以上の学校図書館や自治体の図書館など全国でかなりの数になります(注2)。それぞれに1冊ずつ所蔵してもらうだけでも重版になるという見立てはありました。

注1:2005年に誠文堂新光社から出版した「素晴らしい装束の世界−いまに生きる千年のファッション」

注2:図書館調査事業委員会の2018年度の調査資料によると、公共図書館の数は3000以上、大学図書館の数は1300以上。2018年度の文部科学省・学校基本調査によると、中学校と高校の数(学校図書館の数)は合わせて1万5000校以上

清田さん 図書館需要は手堅く有職装束大全の販売も順調で、発売後1年から1年半ほどで重版する予定でした。ただ、今回の件で重版のタイミングが早くなったというのはあります。

竹内さん 私はネットの盛り上がりのスピードが速いことにびっくりしましたし、この本を「ヤベェ本」と表現する言葉のセンスにも驚きましたね。

──予定より早いタイミングでの重版に迷いはありませんでしたか。

平凡社の清田康晃さん(営業部 販売1課)

清田さん いずれは重版する予定だったので、迷いはありませんでした。やるんだったら、ツイートが盛り上がっているタイミングですぐ重版しようと決断しました。15日には刷り上がり、16日午後から全国の書店に順次並ぶ予定です(取材日は10月11日)。併せて、ネット書店にも在庫を送ります。通常は重版作業に3〜4週間かかりますが、今回はスピーディーに進みました。ツイートが21日で、問い合わせの電話が掛かってきたのが24日。25日には重版を決定しました。

──書店からの問い合わせが殺到したと聞きました。24日の社内はどのような状況だったのでしょうか。

清田さん 書店からの問い合わせを受ける部署から、「何かいつもより注文が多いんですけど」と報告されました。でも、こちらもよく分からないんですね。広告も出していないし販促のツイートもしていなかったので。こういうことはこれまでもあったのでSNSが原因だろうとは思っていたのですが、robinさんのツイートには書名が書かれていなかったので、検索しても分かりませんでした。

八條さん 私も最初はTwitterをやっていなかったので、よく分かりませんでした。そのうち弟子の何人かが「こんなもの(ツイート)がありましたよ」と教えてくれたんです。

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