河本教授は大阪ガス時代に経験した「給湯器の故障予測」の事例を紹介。給湯器のメンテナンスをする際、修理担当者は故障していそうな交換用部品を持参する。当初は修理担当者が故障していそうな部品を予想して持参していた。河本教授は、この作業の精度を高めるために、データ分析を駆使して故障中の部品を予測しようとした。
データ分析システムを構築するに当たり、河本教授は約300万件の修理業務報告データやガス使用量、気象データなどを活用した。
最初は機器の故障確率を予測したが、現場担当者には「使えない」とダメ出しされた。前日に機器の故障を予測できても、部品調達が間に合わないからだ。そこで7日後以降に機器が故障する確率を出すことにした。ヒアリングを重ねると、「部品ごとの故障率が分かれば役に立つ」という言葉も引き出せた。「部品ごとの故障率を割り出すという概念は、最初はなかった」と河本教授。現場の意思決定に役立つかどうかを突き詰めた結果、ようやく正解にたどりつけた。
ただ、メーカーからの要望で一番多いのは、故障検知ではなく不良品の原因追究だという。「そして、持っているデータを全部くださいと言うと大体失敗する」と河本教授は苦笑する。
「データサイエンティストが、取りあえず持っているデータを全部くださいと言っても、原因は出ない。なぜなら、もらったデータのどこにも原因が入っていないから」(河本教授)
「『取りあえずデータを全部ください』というのは受け身なので、その時点で負けている。データサイエンティストは、どういうデータが必要なのかを考え、情報に対して能動的に動かないといけない」(同)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR