SF作家ウィリアム・ギブスンの有名な言葉に、「未来は既に到来している。均等に配分されていないだけだ」というものがある。新しい技術が開発されたとき、それはあらゆる領域に均等に普及していくわけではない。
それはAI技術も同様で、地域や業界で導入の進み具合は異なる。業界ごとに見ると、それぞれどのような状況なのだろうか。今回は、製造業におけるAI活用例を紹介したい。
いまや毎日のようにAI(人工知能)の話題が飛び交っている。しかし、どれほどの人がAIについて正しく理解し、他人に説明できるほどの知識を持っているだろうか。本連載では「AIとは何か」といった根本的な問いから最新のAI活用事例まで、主にビジネスパーソン向けに“いまさら聞けないAIに関する話”を解説していく。
(編集:村上万純)
近年では製造業におけるAI・IoT技術の導入が進んでおり、「インダストリー4.0」「スマートファクトリー」といった概念も登場している。
では、製造業におけるAIの導入は、どのくらい進んでいるのだろうか。矢野経済研究所の調査によると、日本企業のAI導入率は2.9%にとどまるという(2018年12月、515社が対象)。業界別に見ると、化学製品などを扱うプロセス製造業は3.9%、加工・組立製造業では3.7%と、全体平均より高い数字になっている。
しかし、最も導入が進んでいる金融業(12.5%)に比べると決して高い数字ではない。また、同調査ではAIの対象にRPAなどを含めているのも気になる。
別の調査も見てみたい。日本経済研究センター(JCER)が総務省などと行った「AI・IoTの取組みに関する調査」では、AIシステムやサービスを導入している企業は全体で14.1%だった(19年3月)。業界別に見ると、製造業のAI導入率は11.2%。
この調査でもAIは「データ解析を通じて学習、推論、認識、判断等を行うもの」と定義されているだけで、それがどこまで高度なものかについては示されていない。しかし、企業がどの分野でAIを導入しているかを業種別に参照できるので、全体の傾向と製造業の傾向を比べてみた。
製造業のため、当然ながら「製造工程」におけるAI導入の割合が高く(21.7%)、全体平均より10ポイント以上上回っている。それ以外は全体平均より低い分野がほとんどだが、「研究開発」は18.9%と比較的高い割合だ。それぞれのケースを具体的に見ていきたい。
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