ITmedia NEWS > 企業・業界動向 >
ITmedia AI+ AI活用のいまが分かる

キホンから分かる製造業のAI事例 検査・検品に“AI研究員”もよくわかる人工知能の基礎知識(2/4 ページ)

» 2019年11月18日 07時00分 公開
[小林啓倫ITmedia]

製造工程におけるAI活用

 一口に製造工程といっても、さまざまなステップが存在する。三菱UFJ銀行傘下の三菱UFJリサーチ&コンサルティングは2018年に発表した「ものづくり分野における人工知能技術の活用に関する調査報告書」において、製造業におけるAI活用の可能性を次のようにまとめている。

 ここで「生産工程の向上」として整理されているのが、製造業における伝統的な自動化・効率化の流れをくむもので、JCERの調査における「製造工程」でのAI活用に近いだろう。この中から、主な取り組みをいくつか取り上げてみたい。

作業の自動化

 製造業における自動化は、産業革命以降、絶えず続けられてきた。AIを搭載した産業用ロボットの開発も進んでいる。

 例えば、日本では「協働ロボット」などとも訳される「コボット」(Collaborative Robot)は、各種のセンシング技術とAI技術を組み合わせ、人間と同じ空間で“協働”する産業用ロボットだ。

 産業用ロボットは、人間に危険が及ばないようフェンスなどで囲われていることが多いが、コボットは周囲を把握して自ら危険を回避するため、さまざまな場所や作業で使うことができる。コボットが占める割合は産業用ロボット全体の3%に過ぎないが、米国ロボット工業会(RIA)は、2025年までにコボット市場が130億ドルに達し、産業用ロボットの34%を占めるようになると予想している。

 コボットのもう一つの特徴が「動作を簡単に覚え込ませることができる」という点だ。製品の性能にもよるが、主要なコボットの多くで、プログラミングをせずに新しい動作を設定することが可能になっている。例えば大手コボットメーカーUniversal Robotsは、次のような事例を公開している。

 これは、米ニューヨークのブルックリン地区で3Dプリンティングサービスを提供するスタートアップVoodoo Manufacturingが、ユニバーサルロボットのコボット「UR10」を導入し、生産量を3〜4倍に増やしたというもの。出力が終わった3Dプリンターから作品が載ったトレイを取り出し、新しいトレイをセットしてプリントを開始させるという作業をコボットが担当している。この作業のセットアップは、たった数時間で完了したそうだ。

 他にも仕分けやピッキング、在庫管理など、ものづくりに関わるさまざまな作業がAIとロボット技術によって自動化されようとしている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.