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違法ダウンロード規制拡大、「スクショ」「軽微なもの」は対象外に? 文化庁、パブコメ踏まえた方針発表

» 2019年12月03日 17時49分 公開
[ITmedia]

 権利者の許可なくアップロードされたコンテンツを、違法と知りながら私的にダウンロードする行為を著作権法違反とする範囲を、漫画や論文など著作物全般に拡大する法改正案について、文化庁はこのほどパブリックコメントの結果を公開した。改正案に対し、個人では8割超が反対するなど、法案への懸念が浮き彫りになった。同庁はこうした結果を踏まえ、スクリーンショットを保存する際に違法画像が入り込むことを適法にすることや、「軽微なもの」を違法化対象から除外することなどを盛り込む方針を示した。

当初案は「反対」、個人の8割

 文化庁が2月に公開した当初の改正案では、ネットユーザーの多くが日常的に行っているスクリーンショットなどの行為も規制の対象に含まれるとあり、ネットでは「一般ユーザーの萎縮を招く」「研究・創作を著しく阻害する」などと批判が続出。日本漫画家協会や法律の専門家からも反対意見が相次ぎ、通常国会での提出は見送られた

 この事態を踏まえ、同庁は9月に「より慎重に検討するため、国民の懸念事項などを幅広く募る」としてパブリックコメントを実施。「深刻な海賊版被害への実効的な対策を講じること」と「国民の正当な情報収集などに萎縮を生じさせないこと」を両立させた形で、ダウンロード違法化を行うことに賛成か否かを尋ねた。この他、スクリーンショットを規制対象とするかなども聞いた。

 同庁が公開した結果によると、個人では「(ダウンロード違法化に)反対、どちらかといえば反対と思われる意見」が約88%(4274件中3792件)を占めた。当初の法案については「違法化の対象を絞り込むべき」「要件にかかわらず、侵害コンテンツのダウンロード違法化自体を行うべきではない」という意見が目立った。

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 一方、出版・映像などの団体では「賛成、どちらかというと賛成」が6割以上(48件中30件)と、個人とは真逆の結果だった。ただ、文化庁の当初案に対しては「当初案のままでいい」(16件)と「違法化の対象を絞り込むべき」(15件)と意見が分かれた。

「スクショ」「軽微なもの」は対象外に

 これらの意見を受け、同庁は11月27日に開いた有識者検討会で「漫画家・出版社をはじめとするステークホルダーの意見や、パブリックコメントなどで把握された国民の皆さまの懸念・不安に十分に留意する」と説明。条文ベースで具体的な案をとりまとめることを目指すとした。

 その際、当初案から変更を加え、少なくとも(1)スクリーンショットを行う際に違法画像などが入り込むことを適法にする、(2)数十ページで構成される漫画の1コマなど、「軽微なもの」を違法化の対象から除外する、(3)普及啓発・教育などや運用上の配慮、施行状況のフォローアップについての規定を追加する──といった点を反映する方針を示した(PDF)。ただ、同庁は「最終的な制度設計・取り扱いを示すものではない」と注記している。

 パブリックコメントでは、「原作のまま」という要件を追加する(二次創作作品・パロディーなどのダウンロードを対象から除外する)、「著作権者の利益を不当に害することになる場合」に限定する、いわゆる海賊版サイトなどからのダウンロードに限定する──といったように、より対象の範囲を絞るべきという提案もあった。同庁は、一連の内容を法案に反映するか否かも検討するとしている。

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 同庁の方針に対し、検討会に参加している漫画家の赤松健さん(日本漫画家協会常務理事)は、自身のTwitterで「前回までは(権利者が要らないと言っているのに)『とにかく規制は必要だ。しかも文化庁案のままで』と主張していた面々が、今回は『まあ国民が不安というなら仕方ない』くらいに軟化しているので、比較的やりやすいです」とツイートしている。

 だが、ネットでは「大部分は当初案のままで、予断を許さない状況だ」などと懸念する声も少なくない。

 表現規制反対派の山田太郎参議院議員は「ダウンロード違法化は、漫画、アニメ、ゲーム以外にも論文、ビジネスデータ、その他趣味の世界にも影響があります。今回の文化庁検討会がまとめている海賊版対策は、漫画やアニメの海賊版に限定するという条項案は削除されています。さまざまな方面で懸念を感じる方々は声をあげて欲しいと思っています」と訴えている。

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