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» 2019年12月17日 14時26分 公開

「Aの左」に位置するキーに文化を見る キーボード配列とコンピュータの歴史 (2/5)

[大原雄介,ITmedia]

そもそもControlって?

 事実関係を確認したところで、もう一段深い話を。Aの横に何があるのかというと、実は機種ごとにまちまちである。MS-DOSマシンに関して言えばIBM PCとその後継製品が主流だったからほぼ101Key互換(たまに変なのはまあある)だが、CP/Mだと例えばKayproのKayPro IIはVT100スタイルである。これも変なところがいくつかあるが、おおむねVT100スタイルである。

photo KayPro IIのキーボード。WikipediaのKayproの写真より

 ところが、例えばTandy RadioShackのTRS-80はこんな具合だし、そもそもControlというキーを持たない文化もあった(その代表例がIBMである)。

photo TRS-80のキーボード(ロンドンのComputer Museumの展示品を筆者が撮影した)

 ではそもそもControlというキーはどうして生まれたのか? CP/MにしてもMS-DOSにしても、そのルーツというか影響を与えた存在が、後にCompaqに買収された(そしてさらにHPの資産となった)DECのRSX-11(著名なミニコンであるPDP-11の系列)であるが、そのDECにしても突然Controlというキーが湧いたわけではない。1970年代に入るとDECはさまざまなビデオターミナル(要するにCRTモニター+キーボードで構成されたシステム)を世の中に送り出し、その中でも一番有名なのがVT100であるが、その前のVT50とか更に前のVT20、そのさらに前のVT05にもControlキーがあった。

photo VT100以前のVT05にもControlキーはあった。CapsLockは1段下、でAの横には"〜"キーが。WikipediaのVT05の写真より

 このVT05は1970年の発売であるが、AT&Tベル研究所のケン・トンプソン氏(Space Travelの作者としても有名)らがUNIX(最初の名称はUnics)をPDP-7に実装したのは1969年のことである。

 この時代のPDP-7は入出力をどうしたかというと、もちろん紙テープとかカードリーダーもあって実際使われていた(UNIXの開発が当初は紙テープベースだった、という話もある)が、それだけだと不便なのでキーボード入出力機能も必要とされた。こちらの写真を見ていただくのが分かりやすい。中央のラックに収まるのがPDP-7本体、右端にあるのが多分テープドライブであり、その手前にタイプライター状のものが控えている。これ、TeletypeのASR-30シリーズ(おそらくASR-33)である。

 「テレタイプ?」という読者もおられると思うので補足しておくと、昔は長距離で電文を送る場合、モデムとタイプライターが一体化したような機械を利用していた。要するに送り元がキーを打つと、それに対応した印字が受け側で行われるという仕組みである。いろんな会社が同様の製品を出していたが、TeletypeのASRシリーズが一番有名である。このテレタイプをそのままコンピュータの入出力に利用しよう、というわけだ。実際DECはこのTeletypeのASRシリーズを当初から入出力機器として利用していた。

 さてテレタイプと言えばASR-33が一番有名であるが、そのキーボードはこんな感じで、Aキーの真横にControlキーが配されているのが分かる。

photo Teletype ASR-33は、Aキーの真横にControlキーがある。WikipediaのASR-33の写真より

 実はこの前のモデルであるASR-32の場合、ShiftもControlもなかったりする。実はASR-32の場合、そもそも大文字小文字の区別もないからShiftキーが不要だし、制御コードのサポートも最小限だったので専用キーで済んだ。制御コードというのはLine Feed(紙を1行分送る)とか、Bell(ベルを鳴らす)とかである。Line FeedはASR-33にもPの右にキーが残っているが、こうした特殊キーは、制御コードが増えるにつれて「Controlキー」+「アルファベット/数字キー」で代用されるようになった。

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