まず、動きの早い魚などの判別は難しかった。水族館と異なり水槽の仕切りがないため、一度逃げられてしまうと再び出会う可能性はゼロに近い。動きが緩やかになった時にアプリをかざせても、人間側も完全に停止せず水中に漂っている状態のため、どうしてもぶれてしまい認識が難しい。
また、生き物の背景に岩場や珊瑚などがあると、背景も含めて生き物と認識され、正しい名前が表示されないことがあった。フグを見つけた時は、マダコやウミウシの仲間と認識された。潜りながら正しい名前を認識するには、映り込む背景を考慮しながらスマホをかざす必要がある。
スマホの設定や使い方にも要注意だ。スマホを防水ケースにしまって水中で操作すること自体は可能だが、やはり直接タップするより感度は鈍くなる。タップしても認識されなかったり、逆に触れたつもりがなくても背負っているダイビング機材などに当たってしまい、予期しない操作が行われることもあった。
4回潜った結果、自然の海ならではの難しさはあったものの、クマノミやウミヘビをはじめ冬の海に生息する約20種類の生き物図鑑が完成。世界に1つ、オリジナルの図鑑だ。
LINNE LENSでは図鑑の他にも、収集した生き物の種類を自動で分類した図を作成してくれる。生き物同士の意外なつながりが分かり、新しい発見がある。
実際にLINNE LENSと潜ってみると、その場で生き物の名前が分かるのは便利で、オリジナル図鑑も手軽に作れる点はダイバーの好奇心をくすぐられる。
だが、メリットばかりではないと感じたのが正直な感想だ。水中でスマホやアプリの操作ばかりに気を取られると、他の生き物を見るチャンスが減る他、一緒に潜っている仲間を見失ったり、潮の流れにさらわれたりしかねない。近年は「歩きスマホ」が問題視されているが、「泳ぎスマホ」も命にかかわる危険性があると感じた。
LINNE LENSの公式サイトにも、シュノーケリングやダイビングで活用できるとあるものの、「安全には十分ご注意の上、各自の責任でご利用ください」とある。もし水中でスマホやアプリの操作が思うようにできなくても、潔く諦めることが肝心だろう。
LINNE LENSは、水中カメラで撮影した写真に対しても使用できる。泳ぎながらのスマホ操作が難しい場合は他のカメラで写真のみ撮影しておき、海から出た後にスマホをかざし、生き物の名前や生態を調べるのがおすすめだ。
LINNE LENSを開発したLinne(東京都渋谷区)は、地球上の生き物の9割が未だに発見されていないとして、「アプリをきっかけに生態系に対する理解を深めてほしい」としている。特に海の生物は未知の種が多く存在するといわれる。水族館や動物園などの施設に限らず自然の環境下でも、安全面やスマホの操作性をクリアした上でLINNE LENSをフル活用できれば、さらなるユーザーの拡大が見込めそうだ。
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