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» 2019年07月11日 18時21分 公開

LINEに画像を送ると、AIが3秒で文字起こし 「企業や役所の働き方変える」 長崎のベンチャーが開発

紙の書類をスマホで撮影して「LINE」で送ると、約3秒でテキスト化して返信するAIアプリが登場。開発元は、長崎県西海市のベンチャー企業「西海クリエイティブカンパニー」。ユーザーがOCRソフトなどを用意しなくても、書類や帳票を簡単にデータ化できる点が特徴だ。

[濱口翔太郎,ITmedia]

 紙の書類をスマートフォンのカメラで撮影し、「LINE」で画像を送ると、約3秒でテキスト化して返信する――。こんなAIアプリを、長崎県西海市のベンチャー企業「西海クリエイティブカンパニー」が7月3日からLINE上で公開している。ユーザーがOCR(光学文字認識)ソフトなどを用意しなくても、書類や帳票を簡単にデータ化できる点が特徴だ。

 記者が試しに名刺を撮影して公式アカウントに送ったところ、すぐに氏名や企業名、所属部署、オフィスの住所、電話番号、メールアドレスなどを正確にテキスト化して返信してくれた。

photo 長崎のベンチャーが開発した「文字起こし ばりぐっどくん」

 このアプリの名前は「文字起こし ばりぐっどくん」。LINE上で友だち申請すると、誰でも利用できる。同社の本業はデザインやWebメディアの運営だが、西海市内の企業・役所から紙文書のスキャンやデータ入力作業を減らし、地域全体の業務効率を高める狙いで開発したという。

 だが、リリースすると他の地域からも利用者が続出。11日朝の時点で、西海市の人口を上回る2万8000人のユーザーを集めた。現在は解消しているが、想定以上の画像が届いたため、一時的に処理が追い付かなくなる不具合も起きたという。

薬局などから高評価

 顧客との接点としてLINEアカウントを活用する企業は多いが、画像内文章をテキスト化するアプリの提供は珍しい。そのため、個人ユーザーだけでなく、法人のニーズも高まっているという。現在は企業や医療機関から高い評価を受けており、とある薬局からは「作業のスピードがかなり早くなった」と喜ぶ声があったそうだ。

photo アイティメディアの企業サイトを送ってみた結果。なかなかの精度で文字起こしをしてくれた

 この薬局では薬の在庫を確かめるため、定期的に棚卸し作業を行っている。その際は数百種類の薬をアルバイトスタッフが数え上げ、名前を1つずつPCに打ち込んでいた。同アプリを使えば、薬のラベルを撮影してLINEに送るだけでテキスト化できるので、業務時間が短縮されたという。

 このアプリを開発した、西海クリエイティブカンパニーの宮里賢史さん(シティマネジャー/取締役)は「地方は少子高齢化の影響で仕事の人手が不足しています。それなのに企業や役所は『文書などを紙でやりとりし、保管する際に手作業でデータ化する』という仕事に膨大な時間をかけています。昔ながらの作業に慣れてしまい、テクノロジー活用を“別世界の話”のように捉えている風潮もあります。こうした意識を変えたいと考えました」と開発の背景を説明する。

 「『人口減少が加速している地域社会で、テクノロジーはどれくらい広がるのか』というテーマを検証するために、利用料は無料にしています」という。

 この仕組みの裏側では、Google Cloud Platform(GCP)の画像認識サービス「Cloud Vision」を使用。ユーザーから届いた画像をクラウド上に集め、文字の認識・抽出を行っている。LINEの公式アカウントを使ってユーザーとやりとりする仕組みは「LINE Developers」で構築している。

 2つのシステムは、クラウド上でスクリプトを編集・実行できるプラットフォーム「Google Apps Script」上で動かしている。安全性にも配慮し、ユーザーが送った画像は、西海クリエイティブカンパニーと各ツールの提供元が保存・閲覧できない仕様にしている。

約1週間で開発

 宮里さんにエンジニアの経験はないが、プログラミング教室に半年間通ったのち、講師の力を借りながら約1週間でこのサービスを作り上げたという。「『やってみたら面白そうだな』と思っていたのですが、試しに作ってみたら本当に動いてしまいました」と宮里さんは笑う。

 今後も当面はサービスを無料で提供するが、ユーザーが飛躍的に増えた場合は法人のみ有料化することも視野に入れている。宮里さんは「地方の人たちに『こんな技術があるんだ』『自分たちにもできるかも』『自社ならこう使うな』といった気付きを与えられればうれしいです」と語った。

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