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Slackが“部室”に? N高、380人が所属する美術部コミュニティーの運用法(2/2 ページ)

» 2020年01月22日 12時00分 公開
[谷井将人ITmedia]
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「実際に会わなくてもイラストを見れば分かる」

 生徒同士の会話だけでなく、生徒と教職員との会話もSlack上で行われる。実際に顔を合わせて会話する機会はほとんどないため、登校日やイベントなどで顔を合わせるときには互いに「はじめまして」とあいさつする場面もあるという。添削指導も基本的にSlackで行われる。

 特別顧問の濱田順教さんは普段、プロのアートディレクターとしてゲーム制作などを手掛けるスカイリンク(東京都渋谷区)でゲーム用の背景イラストなどを描いている他、講師として物理的な教室で若手イラストレーターの指導も務めている。N高美術部では月に2回程度、イラストの添削や、絵画コンクールにイラストを提出する生徒の指導などを行っている。

photo 特別顧問の濱田順教さんはゲームの背景などを手掛けるプロのアートディレクター

 実際に顔を合わせて話し合いながら指導する場合と、チャットでやりとりする中で指導する場合とでは、情報量やコミュニケーションのスピードは変わるが、濱田さんによれば、実際に会わなくても生徒のことは十分に理解できるという。

 「イラストを見れば、線の描き方や色からその絵がどのくらい時間を掛けて描かれたのか、急いで仕上げたのかという背景や、そのときの生徒の体調やメンタルもある程度分かる」(濱田さん)

テレワークならぬ「テレ部活」 “テレ”ネイティブの社会進出もすぐそこに

 Slackを通して生徒や教職員がやりとりするのもテレワークに近い取り組みといえる。自宅やカフェから活動に参加できるため、従来であれば登校にかかっていた時間も作品作りに使える。

 九州に住んでいる部員は「授業以外のかなり時間は絵を描いて過ごしています。九州に住んでいても好きな時間に活動できて、似た趣味の人とも交流できます」と話す。

 このように、実際に会って活動する以外の部活動の在り方がN高では実践されている。企業が「テレワーク」を導入する際にはトラブルも付き物だが、若い頃からテレコミュニケーションに慣れた「“テレ”ネイティブ」ともいえる生徒たちが、近い将来、企業のテレワークに変化をもたらすかもしれない。

 設立から約3年がたち、卒業生も出始めた美術部。ネット上の部室で活動していた生徒たちが社会に出てくるのももうすぐだ。

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