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海外でサイフをなくすとこんなことになる(1/3 ページ)

» 2020年01月27日 09時55分 公開
[西田宗千佳ITmedia]

 CES 2020取材のため米国に出かけたジャーナリストの西田宗千佳さんが遭遇した、紛失事件にその顛末(てんまつ)。


 実は今回のCES取材では大事件が起きていた。西田がサイフをなくしたのだ。国内であっても大ごとだが、海外ではさらに大ごとだ。

 実のところ、「いつかはやらかす」とは思ってたのだ。

 海外取材をするようになってそろそろ20年。年に10回以上海外と日本の間を移動している。だが幸運にも、クリティカルなトラブルは一度もなかった。

 だが、これは自分が慎重なせいではなく、単に「運がいい」のだと思っていた。友人・知人のライター陣の中にも、「パスポートをなくした」「スマホをとられた」「荷物を盗まれた」「サイフをスられた」といったトラブルは、年に数回ある。いつか、気を抜いた時に何かがやってくる……とは警戒していた。

 とはいうものの、今回だとは思わなった。トラブルは、忘れたころにやってくる。

この記事について

この記事は、毎週月曜日に配信されているメールマガジン『小寺・西田の「マンデーランチビュッフェ」』から、一部を転載したものです。今回の記事は2020年1月20日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額660円・税込)の申し込みはこちらから

疲れがたまるとろくなことはない

 思えばその日は予兆があった。

 朝、CES会場に着いてパスポートの定位置を触ると、そこにあるはずのものがない。一瞬顔が青ざめたが、冷静に記憶をたどると、部屋を出るときにパスポートを入れる動作をした記憶が明確にない。慌てて、確認のためにホテルに戻ると、やはり机の上にはパスポートがあった。ほっと胸をなでおろした。

 どうも、いつもとは体の動きのルーティンが違う。疲れていたり慌てていたりするとままあることだが、CES取材も残り2日となり、疲れもたまってきたころだ。「こりゃ気を付けないとな」と肝に銘じた。

 そう、銘じたはずだったのだ。それを10時間後、すっかり忘れてトラブルに遭遇することになるとは。

 その日は特に忙しかった。

 夕方までCES会場で取材したのち、ラスベガスの中心地であるストリップ沿い(CES会場もここに集中しており、筆者もここに宿をとっている)からダウンタウン(ストリップ沿いから車で15分ほど、電飾ギラギラの古典的な「いかにもラスベガス」な風景は、今はこちらにある)に移動。ダウンタウンのホテル内で開かれる日本からのCES視察ツアー向けに、CESの状況をまとめる短い講演の仕事が入っており、それが終わってから、またストリップ沿いのホテルに移動し、ある企業の人々と食事会をする予定になっていた。部屋に戻ったら仮眠して、翌日早朝から執筆だ。

photo CES 2020会場

 というわけで、ダウンタウンのホテルでの講演仕事を終え、急ぎ食事会へ移動したときのことだ。急いでいたので、目の前にいるタクシーを捕まえ、移動を開始した。移動は特に何事もなく終わり、急いで料金を支払い、タクシーを降りた。

 そしてドアが閉じたときに、ふと違和感を覚えた。

 あ、サイフがない。

 料金を支払う際、クレジットカードを取り出したときにはあったので、完全にタクシーの車内だ。

 「あっ」と思って振り返ると、そのタクシーはすでになかった。もう走り出して、遠くへ移動していたのだ。

 そのホテルは、タクシーの車止めとタクシーを捕まえる場所がかなり離れており、タクシーは次の客を捕まえるため、急いで離れていたのである。

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